さて、ユーザーである業務部門に対して、いくつかの現実的な忠告を挙げたい。
まず、業務部門はIT導入の費用を自分たちが負担しているのだということを、改めて強く認識してもらいたい。これが当たり前のことでありながら、ともすれば当の本人たちが忘れて、他人事になってしまう。だから、ここで強調しなければならない。IT投資の資金はトップが出してくれるわけでも、経理部が負担してくれるわけでも、ましてや他部門が恵んでくれるわけでもない。ユーザーが自分で負担するのである。誰だって、自分の財布の中の出し入れにはただならぬ関心を持つだろう。もしシステム効果が出れば投資の元は充分回収できるだろうが、所期の効果が出なければ金をドブに捨てているのと同じことである。金銭面で利益を得るのも、被害をこうむるのも、自分たち以外の何者でもないという現実を、厳しく認識すべきだ。A社機械事業部は、他人事の典型例である。
次の忠告として、ある部門へのIT導入であっても、他の部門も無縁ではないということだ。C社・D社の例に見られたように、IT導入は本来のユーザーと考えられる一営業部門・一製造部門への影響にとどまらず、製品原価や人員計画へ影響するように、関連部門も損得の影響を受けることになる。「ユーザー部門」とは、導入対象部門だけでなく、関連部門すべてなのだ。
さらに、ユーザー部門は何が何でもシステムを成功させるのだという気迫と執念を持て、と忠告したい。費用を負担しているユーザー部門をおいて、他に鬼気迫る気迫と執念を持つことができる部門が他にあろうか。システムが稼働を始めると、いろいろトラブルが発生するのは当然である。「何としても成功させる」という気迫と執念があれば、次々難問が押し寄せても問題を解決できる。
「鬼気迫る気迫」というのは、精神論として言っているのではない。システムに問題が起きれば、ディテールまで突っ込んで議論をする、ミーティングを開くとなれば、欠席者など誰1人いない、改善のための課題について、迅速に共有がなされる、などといった具体的な行動に表れるものである。情報の提供をただ要求するのではなく、なぜその情報を確保して、確認する必要があるのかを明確に示し、自ら、コミットしていく態度こそが人を動かすのである。もちろん情報を求められる側にもその態度が必要である。
IT導入費用を自分たちが負担をしていると思えば、気迫も執念も生まれよう。B社部長のように当事者が斜に構えていては、システムは永久に軌道に乗らない。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授