学業に支障のない採用活動を 日本IBM欲しい人材をどう採るか(1/2 ページ)

「売り手」といわれる昨今の新卒採用マーケット。いまIT業界で働く若者にはどのような資質が必要とされているのか。特集「欲しい人材をどう採るか」では、各社の戦略や取り組みから読み解く。

» 2008年05月14日 06時00分 公開
[伏見学,ITmedia]

 バブル崩壊後から長らく続いた“就職氷河期”を乗り越え、2005年頃から採用環境が「買い手市場」から「売り手市場」へと変化してきた。こうした状況の背景には、組織の空洞化など団塊世代の定年退職によって企業が被る諸問題である「2007年問題」が存在する。

 一方、採用増により新たに企業に入る学生にとっては恵まれた状況になった。しかし、売り手市場になったことで就職に対する考えが甘くなったり、根拠のない自信に満ちあふれたりする学生も目立つようになったという。また、4月23日に財団法人の社会経済生産性本部が発表した2008年度の新入社員意識調査によると、「今の会社に一生勤めようと思っている」とする回答が47.1%(前年比1.2%増)と4年連続で増加し過去最高となった。「安定志向」という言葉も今の学生を指すキーワードの1つとして定着するようになった。

 いまIT業界で働く若者にはどのような資質が必要とされているのか。連載特集「欲しい人材をどう採るか」では、ここ数年間における企業の採用傾向や戦略、教育方法などから読み解く。


 第1回は日本IBM。学生のための就職活動サイト「日経ナビ」が調査する「働きやすい会社」で常に上位にランクインする同社は、若手社員のマネジメントや人材育成に対する定評の高さが人気の理由だと聞く。学生たちのニーズに対し、採用側はどう応えているのか。彼らのどこに可能性を見出すのか。人事部で新卒採用を担当する杉内智子氏に話を聞いた。

3つの価値観を提示

――新卒採用の時期と、ここ数年間の人数について教えてください

杉内 日本IBMは日本経団連の倫理憲章*に沿った採用選考を実践しており、4月から試験や面接などの採用活動が始まります。5月上旬には内々定を出していく流れとなります。

 採用人数は、2008年度入社が409名、来年度もほぼ同様の数になる見込みです。ここ数年間は増加傾向にあり、今後も多くの学生を採用していきたいと思います。しかし、IBMの価値観に合っているかどうかが最優先となるため、バランスを見ながら決めていきます。

――価値観とは具体的にどういうものですか?

杉内 「お客様の成功に全力を尽くす」「私たち、そして世界に価値あるイノベーション」「あらゆる関係における信頼と一人ひとりの責任」という3つのバリューです。これらは、全世界の社員による議論の中で確立した基本理念となります。

 日本IBMでは、この価値観に沿った形で採用時に「パッション」「イノベーション」「コラボレーション」をキーワードに掲げています。特にコラボレーションでは、コミュニケーションレベルの高さ、組織を最大化できる力を見ています。

情熱的、革新的な人材を求めているIBM 情熱的、革新的な人材を求めているIBM

――現在の採用市場は「売り手市場」だといいます。欲しい人材を確保するための新たな取り組みなどはなされていますか?

杉内 市場が買い手から売り手になったからといって、特別に何かを変えたということはありません。

――例えば、外資系企業では留学生獲得のために海外の就職イベントに参加したりすると聞きます。

杉内 現在海外のイベントには参加せず、学業に支障のない時期に日本で留学生も対象とした選考活動を行っています。

注釈

倫理憲章

正式には「新規学卒者の採用・選考に関する倫理憲章」。日本経団連が中心になって定めた新卒者の採用活動に関するガイドラインで、大学4年生になる4月1日以前の選考は行わないとするもの


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