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» 2008年05月16日 07時00分 公開

【第11回】疲弊するIT部門(4)〜「俺流プロジェクトマネジメント」のすすめ三方一両得のIT論 IT部門がもう一度「力」をつける時(2/2 ページ)

[岡政次,ITmedia]
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行き着く先を読む力

 前回の現場が求めるのは「Do it myself」で記載したとおり、業務システムはその活用のされ方で良し悪しが決められる。言い換えれば、良いシステムとはIT屋視点での完成度の高さではなく、ユーザー満足度の高さによって決まる。

 分かりやすく言うと、システムの操作性やパフォーマンス、可用性などの直接的なものだけではなく、エンドユーザーの業務がいかに円滑に進み、しかも変化に柔軟に対応できるか。業務支援ツールとして適切な役割を果たしているか、である。

 これからのPMやSEに最も必要な能力(物事の考え方)は、構築しようとしているシステムがどのようにエンドユーザーに使われるかを予測する能力にあるとわたしは考える。

 エンドユーザーがシステムを使いながら、何を感じ、何に気付き、何を考えるか。その結果、どういう行動を取るのか。人間は自分で思い付いたことがその場で速やかに実現でき、自分の考えが正しいことを確認できることがほかの何よりも満足を感じるものだ。わたしたちIT屋がやらなければならないことは、ユーザーの思考を予測し、その過程で出されてくる要望をいかに簡単にサービスとして提供できるように準備しておくか、なのだ。そうすることで、ユーザーはシステムがどんどん進化していくように見える。IT部門への信頼はそれによって取り戻せるはずだ。

俺流プロジェクトマネジメント

 そこで提案したいのが「俺流プロジェクトマネジメント」という方法だ。一般的な「アーキテクチャ」ではなく「人間工学」とか「認知心理学」のようなものに近いかもしれない。システム開発は本番導入後3カ月ぐらいの定着フォロー期間を経て、導入作業が完了するというのが一般的だが、わたしが考えるこのシステム開発の手法では導入してからが勝負となる。

 本番導入時の完成度は65点、70点に意図的にしておき、そこからシステムが使われれば使われるほど100点に近づいていくように仕組んでおくのだ。間違ってはいけないのは、システムの出来を悪く仕上げるということではなく、ユーザー要件に対しての完成度は当然100点なのだが、導入後に発生する運用上の不具合や課題を見越して、その改善の余地を残しておくというわけだ。

 そして、その完成度を向上させていく主人公はエンドユーザー自身という形にもっていく。開発予算も使い切り、本番導入以降はアプリケーションの保守費用で、システム改善に対応しなければならない。その環境下で70点を100点に引き上げるのは難しいように思えるが、これを待ち構えていたように、改善要望に合わせて実現していくのが「俺流プロジェクトマネジメント」の面白いところなのである。

 一般的にIT部門のシステム評価指標は、投資対効果の金額でなされる。投資した費用がどれだけの期間で回収できるかが評価基準となっている。しかしこれはあくまで経理的な指標で、システムの完成度の評価とは異なる。この経理的指標は企画通りにシステムが活用された時の100点満点評価となる。しかも外的環境の変化が少なく継続的に効果が得られるという条件が付いている。読者の皆さんも思い当たるかもしれないが、企画通りにシステムを構築したのに見込み通りの効果が上がらないということがよく起こるのは、ここに原因があるからだ。

 次回は、わたしが仕事の中で気付いたシステムと業務の間にギャップが起こる原因を掘り下げてみたい。


プロフィール

岡政次(おか まさじ)

ウイングアーク テクノロジーズ株式会社 協創企画推進室

三重県出身1959年生まれ。1977年シャープ株式会社に入社。本社IT部門に在籍、10年強の新人教育、標準化・共通システム化を担当。さらにシステム企画担当として、ホスト撤廃プロジェクト、マスター統合、帳票出力基盤の構築等に携わる。2007年4月、ウイングアークテクノロジーズ株式会社に入社。現在、経営・エンドユーザー・IT部門の「三方一両“得”」になるIT基盤構想を提唱し、「出力HUB化構想」を推進する。


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