9月は米Lehman Brothers破たんなどで世界的に金融不安が高まった。29日には米下院で金融安定化法案が23票差で否決された。まさかの事態となり世界的に株価が急落した。NYダウは前日比777ドル下落という史上最大の急落となった。ちなみに次点は米同時多発テロ直後の2001年9月17日の684ドルである。
欧州にも金融不安は飛び火し、国有化や公的救済される大手金融機関が相次いだ。大手金融機関の相次ぐ破たんで、市場では信用不安が極度に高まっており機能不全の状態になってしまった。日米欧の中央銀行が6200億ドルへとドル資金供給枠を大幅に拡大した。
若干修正はされたものの、10月初めに7000億ドルを投入する金融安定化法が成立したことで、米国発世界金融恐慌という最悪のシナリオは目先回避された。しかしサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題に端を発した米国の金融危機が本当に終息するには、住宅市場の回復などが必要である。新規の住宅需要が盛り上がり、住宅価格が上昇するにはまだ相当な時間がかかりそうだ。景気の冷え込みが続く状況では信用不安を完全にぬぐい去ることはなかなか難しい。
米国の物価上昇率を考慮すると、政策金利のFFレート(米国の短期金利)は実質マイナスが続いている。このレートが米国景気を下支えする面がある。当面、米国の景気動向は注意が必要だ。金融不安が収まり、米国経済が早く回復に向かうことを期待する。
金融面から現在の米国経済は大変厳しい状況にあるが、同時に米国の身近な社会現象も厳しさを示唆している。14シーズンぶりにニューヨーク・ヤンキースがプレーオフ進出を逃した。米国経済はヤンキースの後押しさえもなくしてしまった状況である。1973年から2007年までの米国経済の実質経済成長率平均は3.0%。ヤンキースがア・リーグで優勝しワールドシリーズに進出した10年分の平均は3.7%と全体平均を上回る。さらに、ワールドシリーズを制覇した6年分の実質成長率平均は4.4%である。人気球団ヤンキースの活躍はファンの個人消費増加などを通じて米国の成長率を下支えしてきたようだ。
今年は歴史あるヤンキースタジアム最後のシーズンということから、2000年以来8年ぶりのワールドチャンピオン奪回が期待されていたものの、結果はプレーオフ進出さえ逃してしまった。
金融危機により米国経済が悪化することは、日本の景気悪化にもつながる。国内景気は在庫、設備、雇用の調整圧力が比較的小さいので大きく落ち込むことはないとみられるが、回復時期の後ズレが懸念される状況だ。
宅森昭吉(たくもり あきよし)
「景気ウォッチャー調査研究会」委員。過去に「動向把握早期化委員会」委員、「景気動向指数の改善に関する調査研究会」委員などを歴任。著書は「ジンクスで読む日本経済」(東洋経済新報社)など。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授