ついに基調判断は下方修正され、景気後退の可能性が高いことを暫定的に示す『悪化』になった。ただし、大幅な在庫調整などの必要はないことから、傷は浅いとの見方が強い。
6月分の鉱工業生産指数・速報値は前月比マイナス2.0%と2カ月ぶりの減少になった。製造工業予測指数の同マイナス0.9%を下回る数字となった。また、4〜6月期は前期比マイナス0.7%と2四半期連続の減少と、2001年1〜3月期から10〜12月期の4四半期連続以来の厳しい結果になった。
製造工業予測指数前月比は7月分がマイナス0.2%、8月分がマイナス0.6%の減少予想だ。
経済産業省は、昨年12月分から4月分まで「生産は横ばい傾向」としてきたが、前回5月分では「生産は横ばい傾向であるが、弱含んでいる」として判断を下方修正し、6月分で「生産は弱含みで推移」とさらに下方修正した。
鉱工業生産指数を製造工業予測指数の7月分、8月分の前月比で延長し、9月分の前月比をゼロとした場合の試算では、7〜9月期は前期比マイナス1.0%と3四半期連続の減少になる。
2月分の鉱工業生産指数の指数水準が110.2で史上最高水準だが、予測指数で延長すると8月分までにそれを更新することはないことになる。
景気は踊り場にとどまるか、後退と認定されるか、微妙な状況が続いてきたが、どうやら「景気後退」となる可能性が高くなった。
内閣府の景気動向指数を使った基調判断は、最近一致CI(コンポジット・インデックス)を使った客観的なものに変わった。4月分は「事後的に判定される景気の山がそれ以前の数カ月にあった可能性が高いことを暫定的に示す」という『局面変化』の判断になった。
5月分の基調判断は、一致CIの3カ月後方移動平均の前月差が3カ月連続で低下という『悪化』の条件の1つを満たしたものの、当月一致CI前月差が+1.6ポイント上昇で、基調と逆方向の動きだったため基調判断は『局面変化』のまま変わらなかった。
8月6日発表の6月分速報値では一致CIが前月差マイナス1.6ポイントと大きく下降し、2つの条件を満たした。基調判断は下方修正され、景気後退の可能性が高いことを暫定的に示す『悪化』になった。
もっとも実際の景気の山・谷の判断は景気動向指数の一致系列を加工して作成する「ヒストリカルDI」による。一致系列の過半数がピークアウトしたと判定されると景気後退となる。8月6日現在11系列中5系列までのピークアウトが確認されている。あと1系列ピークアウトが確認されると景気後退が確定する。
生産関連統計を製造工業予測指数前月比マイナス0.2%で7月分に関して延長推計すると、新たに生産指数、鉱工業生産財出荷指数、稼働率指数の3系列がピークアウトすることになりそうだ。その場合の景気の山は昨年10月頃になろう。
なお、一致指数を構成する11系列の中には、出荷指数と物価指数の積で算出する中小企業売上高のようにピークアウト感が出ない系列がいくつかある。また、6月分の先行DIが11カ月ぶりに景気分岐点の50%を上回った。最終需要財在庫率指数などがプラス符号になったためだ。
これまで景気判断が微妙だったのは、日本企業の景況感は悪化してきたが、鉱工業生産が7月に持ち直すという事前の調査結果があったことなどが指摘できよう。
鉱工業全体では在庫の水準は低く、設備や雇用の過剰感はあまりない。米国の経済成長率の持ち直しで輸出増など需要が出れば、日本の景気も早めに持ち直す可能性が高かったため、景気が踊り場でとどまる可能性が十分あったからだ。
景気後退の可能性が高くなったものの、後退の程度は浅い可能性が高い。大幅な在庫調整やストック調整の必要はないとみられるからだ。足もとの経済統計では実体を示すデータの中に底堅いものもある。一方、足もとのマインド関連データは相当弱い。例えば日経消費DIの消費支出意欲DIなどは足もと大型金融破綻が相次いだ97〜98年のレベルまで悪化してしまっている。
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明治学院大学 経済学部准教授