景気の底打ち感が強まり、実質GDP成長率は改善傾向にありそうだ。日本テレビ系の長寿番組「笑点」の視聴率からも読み取ることができるという。
6月調査の日銀短観は、大企業・製造業の業況判断DIが3月調査のマイナス58を10ポイント上昇しマイナス48になった。前回より改善したのは2006年12月調査以来2年半ぶりである。しかし前回のボトム(2001年12月調査、2002年3月調査)であるマイナス38をまだ10ポイント下回っている。3月調査の日銀短観は、1975年5月調査(マイナス57)を上回る史上最低水準を記録していた。6月調査での改善は急激な景気の落ち込みに歯止めがかかったことを裏付ける内容と言えそうだ。
大企業・製造業の業況判断DIのマイナス48は、3月調査の先行き見通しマイナス51を3ポイント上回る数字になった。想定より強い数字になったのは景気がまだ拡張局面だった2007年9月調査以来7四半期ぶりのことになる。想定以上に足元の業況判断が改善したことを意味する内容で、景気が拡張局面に入ったことを裏付ける数字となろう。
中小企業はかなり厳しい。6月調査の中小企業の業況判断DIは、製造業がマイナス57で、3月調査と変わらなかった。全規模・全産業の業況判断DIは1998年12月調査(マイナス47)以来の低水準で過去最悪の98年9月調査のマイナス48に近い3月調査のマイナス46から、6月調査はマイナス45に改善はしたものの、改善幅はわずか1ポイントと小幅だった。全規模・全産業ベースの企業の景況感は依然厳しいことが分かる数字だ。
しかし、9月ごろの先行き見通しは改善方向である。大企業・製造業では「先行き」業況判断はマイナス30と「最近」より18ポイント改善の見通しである。中小企業・製造業の「先行き」業況判断はマイナス53で、「最近」より3ポイント改善の見通しである。全規模・全産業では「先行き」マイナス41と「最近」より4ポイント改善の見通しである。
関東甲信地方の梅雨入りは平年より2日遅い6月10日だった。梅雨入りが遅れ6月7日の日曜日が行楽日和だったことは景気にプラスだ。過去58年間で関東甲信地方が梅雨の時期に景気が拡張局面にある確率は64%だ。平年より梅雨入りが遅い年は拡張局面の確率が74%と大きい。昨年は梅雨入りが平年より6日早かったが、今年は逆になった。関東甲信地方の梅雨明けは平年では7月20日だが、梅雨入りが遅く梅雨明けが早いケースでは拡張局面の確率が78%と大きい。梅雨明けの時期が注目される。梅雨も今年は日本の景気を応援しているようだ(編集部注:7月14日に梅雨明けが気象庁から発表された)。
景気はリーマンショック後に急速に悪化したため、2009年1〜3月期実質GDP(国内総生産)は前期比年率14.2%減と史上最悪の減少率になった。2008年10〜12月期も同13.5%減と2ケタの減少率だった。2四半期連続の2ケタ減少率は史上初めてのことだ。しかし8月17日に発表される4〜6月期第1次速報値では、実質GDP成長率は、プラス成長に転じる可能性が大きそうだ。それは4・5月分の関連統計から予測できる。
設備投資の関連データである資本財出荷指数(輸送機械をのぞく)の4〜5月分平均の対1〜3月分平均比は17.0%減となった。建設財は同4.6%減となった。供給サイドから推計される4〜6月期第1次速報値では実質設備投資の前期比は引き続き大幅減少になりそうだ。しかし、それを個人消費や外需が相殺し、十分おつりが来そうだ。
個人消費の供給サイドの関連データである耐久消費財出荷指数の4〜5月分平均の対1〜3月分平均比は9.5%増となった。非耐久消費財出荷指数は同2.6%増だ。一方、需要サイドでは、家計調査の実質消費支出(住居などをのぞく)の4〜5月分平均の対1〜3月分平均比は1.0%の増加。また、乗用車販売台数の4〜5月分平均の対1〜3月分平均比は2.2%増である。以上のように、個人消費関連データから総合的に見ると、実質個人消費の4〜6月期は政策効果もあり、3四半期ぶりに前期比増加になりそうだ。
また、実質輸出入の動向を見ると、輸出の4〜5月分平均の対1〜3月分平均比は9.4%増、輸入が3.0%減であり、仮にサービスも含め4〜6月期全体が同じ伸び率だとすると外需の前期比寄与度は2.0%程度のプラスになる。4〜6月期実質GDPでは外需は4四半期ぶりにかなりのプラス寄与要因に転じそうだ。
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明治学院大学 経済学部准教授