楽観はできないが、雇用情勢に回復の兆しも景気探検(1/2 ページ)

年末を間近に控えてこの先の雇用情勢が懸念されている。参考指標となるであろう自殺者やホームレスの数はピーク時から減少傾向にあり、改善の兆しを垣間見ることができる。

» 2009年11月19日 07時45分 公開
[景気探検家・宅森昭吉,ITmedia]

 9月分景気動向指数・速報値では、先行CIは前月と比較して3.2ポイント上昇した。7カ月連続の上昇だ。一方、一致CIは前月と比較して1.3ポイントの上昇幅で6カ月連続の上昇になった。内閣府の一致CIを使った景気の基調判断は、これまでの「景気動向指数(CI一致指数)は、下げ止まりを示している」から「景気動向指数(CI一致指数)は、上方への局面変化を示している」に上方修正なった。

 「局面変化」は「7カ月後方移動平均の符号が変化し、1カ月、2カ月、または3カ月の累積で1標準偏差分以上逆方向に振れた場合」なので、9月速報分は1カ月分でプラス1.04と1標準偏差分のプラス0.51を上回り、条件を満たした。

 一致CIの3カ月後方移動平均の前月差はプラス1.30と5カ月連続1標準偏差分を上回る大幅上昇で、「3カ月後方移動平均の前月差が3カ月連続で上昇」という、基調判断表の「改善」の基準を十分満たしている。10月分の製造工業生産予測指数は前月比プラス3.1%であることなどからみて、12月に発表される10月分では「局面変化」から「改善」に上方修正されそうだ。

 2008年2月分の鉱工業生産指数は110.1で史上最高水準だったが、2009年2月分では69.5まで大きく低下し、わずか1年間で1983年7月分(69.5)以来の低い水準になっていた。9月分速報値では85.1まで戻した。この水準は22年前の1987年10月分(85.1)の水準である。さらに製造工業予測指数前月比で延長すると2009年11月分は89.4という水準まで戻る。これは前回の景気の谷近辺のボトムである2001年11月分の87.0を上回り、2002年3月分と同じレベルになる。足元ではまだ生産水準は低レベルだが、ようやく前回の谷の水準を上回る目途がついた。目先、着実な改善傾向が続く見通しだ。

先行き改善を示唆

 10〜12月期は経済成長率と相関が高い「笑点」の視聴率が10月18日の週と11月1日の週とで「その他娯楽番組」の首位に2度もなっている。「笑いで不況を吹き飛ばしたくなる」ことが気掛かりだ。新型インフルエンザの影響、エルニーニョ現象による天候への影響、民主党政権下の経済運営など不透明要因が多く、足元の景況感はややもたついている。

 しかし、多くの経済統計は先行きの改善を示唆している。水面下の景気回復のため、水準的には厳しい感じがしてしまう面もあるのだろう。数カ月から半年程度景気に先行する景気動向指数先行CIは、10月分でも大幅上昇が期待されている。10月分の先行CIの採用系列では、日経商品指数、長短金利差、東証株価指数の3系列は各々前月差寄与度が1.50程度、0.45程度、1.42程度のプラス寄与になり、中小企業売上げ見通しDIの前月差寄与度は0.28程度のマイナス寄与になることが11月9日までに判明している。4系列分の寄与度の合計では前月差プラス3.08程度になる。このため10月分の先行CIの前月差は今後のほかの採用系列の出方にもよるが、1999年6月分から2000年2月分の9カ月連続以来の8カ月連続前月差上昇になる可能性が大きい状況だ。

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