今年は野球が景気にプラス要因として働いている。最も人気のある巨人がV9(65〜73年)以来のセ・リーグ3連覇を成し遂げた。さらに7年ぶりに日本一を奪回したことで景気の下支えとなりそうだ。
金融マーケットなどが注目する経済指標の1つが日銀短観だ。9月調査日銀短観は、大企業・製造業の業況判断DIが6月調査のマイナス48を15ポイント上回り、マイナス33になった。前回の景気の谷近辺のボトム(2001年12月調査、2002年3月調査)であるマイナス38を5ポイントだが上回った。前々回の3月調査では、大企業・製造業の業況判断DIがマイナス58と、1975年5月調査(マイナス57)を上回る史上最低水準を記録していた。急激な景気の落ち込みに歯止めがかかり、回復局面に入っていることを裏付ける内容と言える。
大企業・製造業の業況判断DIは、6月調査の先行き見通しマイナス30を3ポイント下回る数字になった。想定したより弱い数字になったのは2009年3月調査以来2四半期ぶりのことになる。思ったより足元の業況判断が弱かったことを意味する内容で、7・8月調査の「景気ウォッチャー調査」のもたつき状況などと整合的な数字言えよう。
一方、大企業・非製造業・業況判断DIの9月調査は6月調査のマイナス29を5ポイント上回るマイナス24になった。エコカーなど政策効果が出ている分野以外の消費低迷の影響などから大企業・非製造業・業況判断DIの改善幅は、輸出が伸びている製造業に比べ小幅にとどまったとみられる。
なお前々回の3月調査のマイナス31は1999年3月調査(マイナス34)以来の低水準だった。なお、9月調査のマイナス24は3月調査の先行き見通しマイナス21を3ポイント下回った。こちらも想定より足元の業況判断が弱かったことを意味する内容で、天候不順や新型インフルエンザの流行懸念、鳩山新政権への不安などがもたつきの背景にあると言えよう。
2009年度の全産業・設備投資計画は、大企業では前年度比マイナス10.8%、中小企業はマイナス33.3%である。大企業・製造業の設備投資計画が前年度比マイナス25.6%、中小企業・製造業の設備投資計画が前年度比マイナス39.7%で9月調査としてはどちらも統計史上最低であり製造業中心に、通常年に比べ2009年度はかなり弱いと言える。
今回の9月調査の日銀短観は、企業の業況判断の急速な悪化は3月調査で終わり、6月調査に続き改善していることを示唆する内容だったが、景気の水準が低いこともあり設備投資などは依然厳しい状況であることを改めて裏付けるものとなった。2008年9月15日のリーマン・ショックの後、世界的に景気は大幅悪化したが、財政金融政策面での各国の機動的な協調により比較的早期に最悪期を脱出できた。日本の景気の改善理由は、第1に年初の時点での交易条件の改善、第2に在庫調整の進展、第3に政策効果である。後退期間は13カ月程度と短く、戦後平均の16カ月を下回ったとみられる。
景気は水面下の回復にとどまっていると言える。内閣府発表のGDPギャップは2009年4〜6月期(2次速報ベース)でマイナス7.8%。これは日本経済が年率40兆円程度の需要不足となることを意味する。マイナス幅は1980年以降では2009年1〜3月期のマイナス8.0%から改善しても過去2番目の高水準。このため物価面ではデフレ圧力がかかっている。雇用・所得環境も底打ちの兆しはあるものの依然厳しい。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授