企業の広告費の代理変数と言える大相撲の懸賞が、7月に行われた名古屋場所では昨年を上回った。
景気動向に関して先行性が見られる「景気ウォッチャー調査」や「消費動向調査」の消費者態度指数などの指標は、景気の谷の有力候補月の2009年3月に先駆けて1月分からいち早く改善シグナルを出していた。どちらも直近6月分まで6カ月連続、前月比で改善している。
景気ウォッチャー調査の最近の改善理由は主に3つある。第一に年初の交易条件改善、第二に政策効果、第三に在庫調整進展である。景気の山は現在の2007年10月から2008年2月に変更される可能性が大きく、景気後退期間は13カ月間となり戦後の平均16カ月間を下回ることになりそうだ。景気後退は深かったが、短かったことは心理面でのサポート材料であろう。
鉱工業生産指数は3月分以降、4カ月連続で増加し、製造工業予測指数では7月分はプラス1.6%、8月分はプラス3.3%と連続の増加が期待されている。6カ月連続増加は1996年4月分からの12カ月連続という記録以来だ。
これまでの景気悪化により経済の活動水準が低いので、今後景気の遅行指数である完全失業率が過去最悪を更新する可能性があるなど厳しい状況も予想される。しかし、景気と一致して動く鉱工業生産指数などから分析すると、水面下ながら景気は目先二番底をつけることなく緩やかな回復を続けそうだ。政策効果の息切れを懸念する向きもあるが、来年に参議院選挙があることから今月末の総選挙の結果にかかわらず政策要因で足元の景気がおかしくなる可能性は小さいだろう。
ここにきて景気の動きを判断するための景気動向指数も、景気拡張を示唆する「改善」に王手をかける状況まで変化してきた。6月分景気動向指数・速報値では、先行CI(コンポジット・インデックス)は前月と比較して2.9ポイント上昇した。これは統計がある1980年以来最大の上昇幅で、2004年3月分の2.6ポイント上昇を上回る数字となった。4カ月連続の上昇だ。一方、一致CIは前月と比較して0.7ポイントの上昇幅で3カ月連続の上昇になった。
一致CIの3カ月後方移動平均の前月差はプラス1.00と、2カ月連続で「振幅」の目安(標準偏差)であるプラス0.59を上回った。内閣府の一致CIを使った景気の基調判断は、「景気動向指数(CI一致指数)は下げ止まりを示している」である。「下げ止まり」は5月分改定値段階に次ぎ2カ月連続だ。
内閣府の一致CIを使った景気の基調判断が「下げ止まり」から「改善」になるための条件である「原則として3カ月以上連続して、3カ月後方移動平均の上昇」に王手がかかった。「改善」の定義は「景気拡張の可能性が高いことを示す」だ。7月分の製造工業予測指数が前月比1.6%増であることから、生産関連指標は上昇するとみられ、9月9日に発表される7月分・速報値で「改善」の判断がなされよう。
身近なデータを見ると、7月後半には九州北部や山口での梅雨前線による集中豪雨など気掛かりな現象が発生した。一部で戻り梅雨が懸念されたように、エルニーニョ現象の動向も気になる。エルニーニョ現象発生時は太平洋高気圧の張り出しが弱く、日本は冷夏になりやすい。エルニーニョ監視指数によれば6月の監視海域の海面水温の基準値偏差はプラス0.7度とエルニーニョ発生の基準のプラス0.5度を上回った。監視海域の海面水温の旬ごとの基準値偏差は6月中旬がプラス0.8度、6月下旬がプラス1.0度、7月上旬がプラス1.0度、7月中旬はプラス1.0度だ。エルニーニョ現象が景気回復の足を引っ張ることはないのか、毎月10日ごろに発表される「エルニーニョ監視速報」での気象庁の判断が注目される。
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明治学院大学 経済学部准教授