――市場そのものの成長が大きく望めなくなった現在、企業経営の方向は競合企業の買収のような水平展開、下流上流域の企業買収を行う垂直展開、新分野へ新たな展開を模索する新規事業投資、あるいは海外市場の新規参入やシェア拡大を目的とした企業買収に向いていると考えられます。欧米の大企業ではこれらの検討を主に経営企画部門でシミュレーションすると聞いています。プロミスはこうした世界の潮流に対しどう対応していますか。
立石 日本には数多くの消費者金融がありますが、既に大手資本に系列化された企業も多く、三洋信販と同じ規模で企業買収を行うことはしばらくないと思います。
当面は、三井住友銀行との提携事業を中心に、金融機関との提携による個人向け無担保ローンの保証事業や、子会社によるサービサー(債権回収)事業などを推進し、個人向け無担保ローン事業で培ってきたノウハウを活用した収益基盤の多角化に取り組んでいきます。
――今世紀に入り、従来では考えられなかったようなダイナミックな事業再編が一般化しつつあります。プロミスではこのような検討が行われているのでしょうか。その場合、経営企画部門はどのような役割を担っているのでしょうか。
立石 当然、M&Aや事業再編といった経営の根幹にかかわる課題に対して、経営企画部門は関与しています。
昨年M&Aにより三洋信販をグループ化しましたが、それに伴い今年8月にはシステム統合を完了し、同9月中に三洋信販の有人店舗・無人店舗を全廃してプロミスの店舗の共同利用体制を構築しています。
人員については、現在社員がグループ全体で6000人ほどおり、三洋信販グループの社員もそのまま引き継いでいます。リストラは行っていません。今後、現在拡大している保証事業やサービサー事業など、グループ全体で将来の収益規模に見合った人員の再配置を進めていきます。
――昨年来、英米を中心とした金融機関の経営破たんや資源、エネルギーの高騰などで予期しない危機が企業を襲っています。そのような危機への対応は出来ているのか、それを管理する仕組みや社内の担当部署と経営企画部門との関連について教えてください。
立石 企業運営上のあらゆるリスクを管理するため、経営企画部門の中に選任部署としてリスク統括部を設置しています。監査部による社内監査や外部のコンサルタント、公認会計士による徹底した業務監査を実施するとともに、リスク統轄部の統制の下、すべての部門にリスク管理責任者を任命し、現場レベルからコンプライアンスの徹底を図っています。
また、社内に内部統制プロジェクトを設置し、日本版SOX法に対応した内部統制システムの構築にも取り組んでいます。
同社が消費者金融で首位の座を争っている企業の1つであるのは周知のことだろう。インタビューを終えて、改めて、同社の経営とITが完全に融合している事情が透けて見えた。これはライバル企業と一線を画している。また、新しいシステムに関し、常に慎重に取り組む姿勢を一貫として崩していない。一方で、インターネット経由の与信などについては業界に先駆けてサービスに取り組んでいる。
これは、同社が常に新技術を調査研究し、数多くのテクノロジーを実用化していることを示している。同時に既存のシステムに関しても、いかに堅牢で安価な運用を心掛けているかが分かる。
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【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上
早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授