――経済危機による市況の悪化をどのように見ていますか。
原 確かに経済は厳しい状況にあります。ただし企業環境は刻一刻と変わるので、今回の危機があろうがなかろうが、常に危機感を抱いていないと存続はできません。たとえ景気が回復しても、地球環境、人口増加、資源不足など、将来はさまざまな問題が山積しています。いち早く先を見据えて、ときどきの状況にうまく対応した国や企業が生き残っていくのではないでしょうか。
当社は以前からラミネート材料などで使われるEVAフィルム(エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム)の開発に携わっていますが、近年は太陽電池の接着用フィルムとしての利用が注目されるようになり、太陽電池の普及にも一役買っています。研究開発は苗を植えるようなもので予測は難しい。芽が出るのは明日かもしれないし10年後かもしれませんが、必ず何かの役に立ちます。やり続けることが肝心なのです。
――組織におけるコミュニケーション不足を問題視する企業は多いです。部下とのコミュニケーションで心掛けていることはありますか。
原 常に前向きに考えることです。経営者がネガティブ思考だと、負の感情はあっという間に下に伝染し、組織自体の体力がなくなります。組織の上に行くほど現場の様子が見えなくなります。しかし、事業は現場の人たちが動いて初めて成り立っています。経営者は前向きなことを考え現場を活気付けることが不可欠です。これがうまくいけば企業は生き残っていきます。
――原さん自身、現場とのコミュニケーションはどのようにとられていますか。
原 月に1回程度、全国の販社や店舗に足を運び、現場の話を聞いています。どれだけの利益を上げているか知るのではなく、現場の人たちが明るく働いているかを肌で感じることが重要です。
先日、新入社員に向けて訓話する機会があり、「現場研修はライフワークで、企業で働いている限り、現場研修は一生やらなくてはならない。これを忘れたら社員としての活力を失う」と話しました。それだけ現場を知ることは大切なのです。
――日々の情報収集として活用しているものはありますか。
原 新聞各紙に目を通すほか、最近は店舗のショーウインドウに注目しています。世の中で今、何が売れているのかは、店頭に置いてあるものを見れば分かります。本や雑誌を読むことも大切ですが、街中にも色々な情報が転がっています。
以前参加したセミナーである人から「世の中に情報はあふれているが、夢と希望があれば自然と欲しい情報だけがやって来る」という話を聞き感動しました。夢と希望を持っていれば情報感度が高まり、たとえ新聞記事を一瞥しただけでも必ず有益な情報が取れるのです。
――ITmedia エグゼクティブに期待することはありますか。
原 (セミナーや勉強会を通じて)人と人、異業種同士を結び付けているのが素晴らしいと思います。異なる業種にこそ、ビジネスのヒントや解があると考えています。会社は大きくなるほど人間関係が冷たくなります。コミュニケーションはたくさんあるけど、表面的で決められた会話しかできないようになります。いわゆる大企業病です。ほかの業界の方の意見を聞くのは新鮮で、とても役に立っています。
最近読んだ本:
泉鏡花作 「高野聖」
昔から何度も読んでいるのですが、時々再読したくなる本です。読むたびに幻想の井戸に引き込まれ、フィクションの原理的な磁力を感じます。
ストレス解消法:
休日に、思い切りプライベートに没頭することです。妻と次男(Gandhi、ケアレンテリアとジャックラッセルのミックス、米国・オハイオ州・ワズワース生まれ)と、約2時間の散歩を必ずします。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授