情報システムの役割が、もつれたビジネスプロセスをほぐすだけでは力不足です。IT予算が大幅に削減されている今こそ、改めて情報システムの存在意義を考えて直してみましょう。
IT予算が大幅に削減されて手も足も出ないと嘆いていらっしゃる方々の声が、多く届いています。そんな時、わたしはあえて「御社にとって(ITではなく)情報システムとは何ですか。そしてどんな役割を担っているとお考えですか」と質問することにしています。読者の皆様は、どうお答えになりますか?
IT予算を削減しているのは、経理部門の人たちやCFO(最高財務責任者)ではありません。お察しの通り、経営トップの明確な意思で削減しているのです。
彼らはたいてい「ITは人間の身体でいえば血液の流れのようなものだ」とか、「ITなくして当社の業務は成り立たない」と言います。「ITは単なるコストだ」と話す方はいません。そして、そういう企業のCIO(最高情報責任者)は必ずこう言います。「当社の社長はITに対する見識が深く、理解がある」と。
しかし、現実問題としてIT予算は減っています。しかもわずかに削減されたというよりは、息も絶え絶えになるほど削減されているのが実態です。それはなぜでしょうか。
答えは簡単です。経営トップから見てITが投資に値しないからです。企業は、どんなに景気が悪くても、価値あるものに投資をします。もちろん、景気の良し悪しや企業が置かれている環境により、投資の領域や規模は違ってきます。つまり、IT予算が削減されているということは、従来よりも投資に値しないと判断をされたことに等しいのです。
これは企業にとって情報システムやITが何の役割を担っているのかについて、経営層が現場に理解させていない、もしくは経営者自身が理解できていないことに起因すると断言できます。まことに残念ですが。そこで、再度質問です。
「御社にとって(ITではなく)情報システムとは何でしょうか。どんな役割を担っていますか」
わたしは、この質問に対し、「情報システムはビジネスプロセスを実装するために存在しています」と回答します。(ビジネスプロセスについては、本コラムの第8回を参照ください)
一見すると単純な回答ですが、その本質は単純ではありません。なぜなら、企業内の情報システムの多くは、企業活動の機能単位(ファンクション)ごとに構築されているからです。
思い出してみてください、情報システムのアプリケーションは、ある部門(主管部署と呼ばれる)からの起案により、検討や開発が行われます。しかし、主管部署内だけに閉じた業務を処理するために情報システムが存在することはほとんどなく、たいていは関連各部署にもニーズを聞いて設計します。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授