デジタルビジネス・イノベーションは誰が興すのか?──デジタルは今や、舞台中央の主役 さて、あなたは?Gartner Column(1/3 ページ)

エンタプライズITは「第3の時代」にどっぷりと突入していることが分かった。グローバルのCIOたちは、この第3の時代における主役は自分たちだと自覚している。日本の結果は?

» 2015年07月14日 08時00分 公開

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 「ガートナー CIOサーベイ2015」の結果から、エンタプライズITは、「第3の時代」にどっぷりと突入していることが分かった(図1)。グローバルのCIOたちは、この第3の時代における主役は自分たちだと自覚している一方で、CEOは、CIOにその役割を期待していないということが明らかになった。特筆すべきは、日本の結果である。何と、CIO自身もCEOも、第3の時代における主役は、CIOではなく、ビジネス部門から選ばれるか、未だ見ぬ誰かであると考えているのである。

図1:エンタプライズITの「第3の時代」が到来

エンタプライズIT:「第1の時代」から「第2の時代」

 2000年頃までがエンタプライズITの「第1の時代」に当たる。第1の時代では、ITのおかげで、一見魔法のように新しいことができるようになった。業務を自動化し、スピードとスケールを格段に高め、これまでビジネス・リーダーが手にしたことのなかった経営情報をITのおかげで提供できるようになった。

 その一方で、IT部門への信頼は、残念ながら低かった。素晴らしいことを実現できても、タイムリーではなく、頼りにならず、コミュニケーションも下手な「発明マニア」のように見られていた。それだけではない。IT部門は一般的に、孤立した下層組織であり、ビジネス部門の主柱とは見なされていなかった。IT部門自身もまた、他のビジネス部門を「頭痛の種」と見なし、美しい技術的アーキテクチャの構築を邪魔する存在だと考えていた。この第1の時代を、職人的ITの時代と言い換えてもよいだろう。

 こうした関係は、西暦2000 年問題とドットコム・ブームの到来と崩壊によって突如終焉を迎えた。信頼できない「ブラック・ボックス」なIT 部門を容認するビジネス部門は減った。そして、エンタプライズITの「第2の時代」に突入した。最近まで、われわれがいたのは、この第2の時代である。

 第2の時代は、エンタプライズITの信頼性を高め、予測可能で透明でオープンなものにした。言わば、エンタプライズITの「工業化」の時代である。第2の時代はまた、ITに関するプロセス、サービスの標準化と「賢いソーシング」の時代でもあった。

 つまり、ITIL、COBIT、Prince2、PMBOKなどの標準が普及し、IT部門が他のビジネス部門を内部顧客として専門的に対処するようになった。第2の時代は必然であり、今も力強く発展している。しかし、この時代はIT部門に大きな犠牲を強いた。それは、破壊的イノベーションである。破壊的イノベーションは、ビジネス部門で発生し、そしてほぼ間違いなくIT業界も巻き込まれている。

 一方、エンタプライズITの世界では、ここ10年間で比較的小規模なイノベーションしか起こっていない。IT部門予算は縮小し、リスクを回避する姿勢が強まった。前述のプロセス、サービス、内部顧客といったこの時代の特徴は、もっぱら企業内部に注力した持続的な改善しか生まなかった。

エンタプライズIT:「第3の時代」が到来

 しかし近年、先進テクノロジを中心とした技術的、社会的トレンドが興隆をみせている。例えばそれは、ソーシャル、モバイル、クラウド、インフォメーション/アナリティクス(ガートナーでは4つの緊密な連携を「力の結節(Nexus of Forces)」と称している)、モノのインターネット(IoT)、3Dプリンティング、インターネット上の新しい電子マネーや決済メカニズムなどである。こうした先進テクノロジとそれらテクノロジが強める個人消費者のパワーをもはや沈黙させることはできないだろう。

 われわれは今、エンタプライズIT の第3の時代に突入したと認めざるを得ない。第3の時代では、何が変わるのか。まず、スピードアップ、コスト削減、拡張性の向上など、これまでのIT 利活用方法でも貢献することは間違いない。しかし、第3の時代で重要なことは、情報とテクノロジを生かしてビジネスを抜本的に変えてしまえるということだ。

 競争基盤と事業ポートフォリオを変化させ、場合によっては新たな産業をも創造する。「サービスとしての住宅(ハウス・アズ・ア・サービス)」を提供する家電メーカー、銀行サービス化する携帯電話企業、在宅遠隔医療をシームレスに導入した病院などのケースを想像してみてほしい。こうした先進テクノロジとそれらテクノロジが強める個人消費者のパワーをもはや沈黙させることはできないだろう。

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