話を情報システムとビジネスプロセスの関係に戻しましょう。ビジネスプロセスを改善しなければならないと考えているCIOは、自社のプロセス改善に注力します。そして、プロセスを実装するために情報システムをツールとして使用します。しかし前述した通り、既存の情報システムは、あくまでも(情報)処理機能を提供しているにすぎません。プロセスを変更するからといって、図1にあるようなメッシュ(網目)構造に起因して、簡単に情報システムを変更するわけにはいきません。プロセスのどこで、何がどのように関係しているのか、もつれた糸を1本1本ほぐすような作業が必要になります。
今回の金融機関の破たんに始まった急激な環境変化は、企業に迅速な変化を求めてきました。ビジネスプロセスと情報システムとの関係をメッシュ状のままにするしかない企業では何が起きるでしょうか。
当然、情報システム側で変更が簡単にいかず、もつれた糸を1本1本ほぐしているだけで、時間が経ってしまい、新しいシステムを稼働したかと思ったら、またビジネスプロセスを変更しなければならないという状況に陥ってしまいます。
そのうちこのサイクルに追随できなくなり、「情報システムが経営の足かせだ」と経営者は嘆くでしょう。既にこんな事態に陥っている企業があるかもしれませんが、そこで働く情報システム部門の方々は辛いでしょう。恐らく、昼も夜も休日もなく働き続けるのに、経営者からは「足かせ」扱いです。悪いのは、ユーザー部門が仕様を決めなかったり、仕様変更を繰り返したりするからなのに……です。でも、これはユーザーばかりが悪い訳ではありません。
今回の不況を、こう表現する方がいらっしゃいました。「まるで、ジェットコースターで滑り落ちるように、一気に下降局面に転じ、底が見えない状況で毎日々悪化している」と。急激な変化に企業も人も追いつけていけないさまを表しているのです。
しかし、このような急激な変化に、必ず追随する企業が現れます。そして、それらの企業は、このような状況下でも確実にビジネスパフォーマンスを向上させるのです。それでは、情報システムに携わるわれわれは、どのようにこの変化を追いかければいいのでしょうか。次回以降でご説明します。
2006年にガートナー ジャパン入社。それ以前は企業のシステム企画部門で情報システム戦略の企画立案、予算策定、プロジェクト・マネジメントを担当。大規模なシステム投資に端を発する業務改革プロジェクトにマネジメントの一員として参画した。ガートナーでは、CIO向けのメンバーシップ事業「エグゼクティブ・プログラム(EXP)」の日本の責任者を務める。日本のCIOは、経験値だけでなく、最新のグローバル標準を研究した上で市場競争力を高めるべきとの持論を持つ。
7月14、15日に開催する「ガートナー SOAサミット 2009」で、ビジネスプロセス改革における課題を浮き彫りにし、CIOや経営層が何をすべきなのかを明らかにする講演「ビジネス・プロセスを改革する」を行う。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授