チーム型マネジメントにおけるリーダーシップとは何か。4種類のリーダーシップスタイルを基に分析を行う。
前回はGoogleのチーム型マネジメントシステムの内容と特徴を紹介した。今回はあるべきグローバルリーダー像の内容と位置付けについて述べる。
チーム型マネジメントを前提とし、企業独自のあるべきリーダー像を構想することがグローバルリーダー育成の第一歩となる。そのためには、組織全体の視点から、将来の幹部候補としてグローバルリーダーを位置付け、具体的なロールモデルをつくり組織文化を浸透させる。個人の視点からは、効果的なリーダーシップを確立し関係者や外国人社員からの信頼を獲得していくべきである。
ではリーダーシップとは何だろうか。リーダーシップとは、影響力(Power to influence)を行使することにより、組織目標に向かってほかの人を導く(Lead)ことである。影響力とは、必ずしも専門知識や自身が持つ情報、職位だけではない。意思決定のプロセスをマネージすることや、対話を促すコミュニケーションスタイル、何より自社と自身の価値基準を築き、組織メンバーを評価することである。
チーム型マネジメントにおけるリーダーシップとは、意思決定者ではなくファシリテーターである。ファシリテーションとは、合意形成による意思決定を基本とし、メンバーの自主的な参加を促すものである。建設的な対話を奨励し、徹底した権限委譲を行うことでメンバーの自主性と創造性を生かすのだ。これは同時に、一定の曖昧さや不明瞭さが付きまとう。この曖昧さを組織メンバー間の信頼で担保するのが民主的リーダーシップである。
影響力の行使する対象により、4つのリーダーシップスタイルが存在する。代表的なマネジリアルグリッド論を参照に、縦軸に人への関心度を、横軸に仕事への関心度をとりリーダーシップを位置付ける。
仕事への関心が高く人への関心が低いのが、権威的リーダーシップ(Authoritarian leadership)である。業務遂行や目標達成にこだわり、メンバーや関係者の感情には配慮しない。個人型マネジメントに多く見られ、リーダーが目標や手順を決定し、命令と統制を行う。短期的に成果が出るリーダーシップなのだが、リーダー不在の時にはチームの生産性が低下しがちなのが欠点である。
人への関心が高く仕事への関心が低いのが平和的リーダーシップ(Peaceful leadership)である。メンバーや関係者の価値観、感情を優先し、職務遂行は二義的なものとする。メンバーとの人間関係は良いが、時として深刻な問題が潜在化しやすいのが欠点である。
人と仕事への関心が低いのは自由放任的リーダーシップ(Laissez-faire leadership)だ。とかくメンバーや個人の判断に任せ自身が関知しないスタイルが存在する。メンバーを導くことなく自由に判断させる放置型のリーダーシップである。
多くの日本企業が目指すべきは、人と仕事への高い関心を示す民主的リーダーシップ(Democratic leadership)の獲得である。チーム型マネジメントをベースとしており、目標設定や手順などにメンバーを巻き込み合意形成を狙う。メンバーや同僚の対話を促し、コミットメントを引き出す。チーム内の建設的な対立を推奨するため、時として悪魔の代弁者(Devils advocate)の役割を演じる必要もある。全般的に組織メンバーの満足度が高いことが特徴だが、同時に合意を取り付けるまでに時間がかかる。民主的リーダーシップを推奨しているのは、トヨタ自動車を代表とする多くの日本企業、そしてGoogleやHPなどの一部の欧米企業である。
日本人が民主的リーダーシップを構築するには、チーム型マネジメントとのセットで実践することが重要だ。メンバーを意思決定に参加させることが、彼らの成長を促し、満足度を高める。欧米企業にも個人型マネジメントを嫌う欧米人は存在する。チーム型スタイルで彼らのニーズを満たすことで、信頼感を獲得できるのだ。
日本流「チーム型マネジメント」 バックナンバー一覧
岩下仁(いわした ひとし)
バリューアソシエイツインク Value Associates Inc代表。戦略と人のグローバル化を支援する経営コンサルティングファーム。代表は、スペインIE Business School MBA取得、トリリンガルなビジネスコンサルタント。過去に大手コンサルティング会社勤務し戦略・業務案件に従事。専門領域は、海外マネジメント全般(異文化・組織コミュニケーション、組織改革、人材育成)とマーケティング全般(グローバル事業・マーケティング戦略立案、事業監査、企業価値評価、市場競合調査分析)。
現在ITmedia オルタナティブブログで“グローバルインサイト”を執筆中。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授