かつては低コストで労働力を提供する場に過ぎなかった新興国は、魅力的な市場に変貌するとともに、自らも競争力を高めて大きく経済成長を遂げている。キリン、ナイキ、ネスレなどの事例から新興市場攻略の糸口を探る。
前回は、グローバル企業における基本理念の構造と事例について述べた。基本理念とは、使命(ミッション)、価値観(コアバリュー)、将来像(ビジョン)から成り立ち、企業の存在危機や組織改革、企業設立などの成長環境に合わせた構築と実施が必要となる。今回は基本理念を実現するための施策となるグローバル戦略について考察したい。
基本理念を達成するためには、事業の指針となる戦略が必要である。企業の使命や将来像の実現のため、どのようにグローバリゼーションを進めるのか。グローバル化かローカル化かの問いに、機能、地域、製品ごとに答えが必要である。
例えば米Googleの使命である「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること」を達成するためのグローバル戦略とは、世界中のどの国でどのようなサービスを提供するかである。グローバル市場のどこで何を提供するのか、その答えがグローバル戦略である。
フラット化時代のグローバル戦略では、国という障壁を越え、地球規模での戦略構築が求められる。世界規模で事業を行うことで、製品単位あたりの原価を下げる「規模の経済」や、事業のシナジーを引き起こす「範囲の経済」を実現するだけでなく、世界規模でのイノベーションを起こすことも可能だ。グローバル戦略とは選択と集中であり、世界中の各市場(国、地域)と自社の各事業を選択し、同時にどの市場と事業を捨てるかの決断である。自社にとってのコア業務は何か、コア業務をグローバル市場のどこで行うのか、どの業務を取捨選択するべきなのか。オフショアやアウトソーシングなどの選択肢も豊富にある。
つまるところグローバル戦略の方程式とは、世界中のどこで何を提供するかである。どの国の誰に対して何をどのように製造・販売し、業務提携やM&A(企業の合併、買収)を実施するのか。集中すべきは先進国か新興国か、富裕層か中間層か。販売すべきはグローバル製品かローカル製品か。ローカル製品であればどこまで現地のニーズに対応すべきか。そのためには経営機能である開発研究、製造、販売、流通を世界規模で位置付け、かつ継続的に見直す努力が求められる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上
早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授