【第4回】20世紀型の経営指標では通用しない21世紀市場を勝ち抜くIT経営(1/2 ページ)

事業規模をひたすら拡大する恐竜型の繁栄はもはや許されない。21世紀では筋肉質な体型にして変化への対応力が高い哺乳類型企業への転換が求められるのだ。

» 2009年09月30日 08時15分 公開
[上村孝樹(ジャーナリスト),ITmedia]

 21世紀市場は、20世紀と大きく異なる。非成長型市場である。事業規模をひたすらに拡大する恐竜型の繁栄はもはや許されない。筋肉質な体型にして変化への対応力が高い哺乳類型企業への転換が求められる。規模拡大よりもビジネスの継続性が重要となる。売上高、利益額の増大よりも、利益率向上や社会的存在のとしての価値増大が重要となる。

21世紀市場と20世紀市場は大きく異なる 21世紀市場と20世紀市場は大きく異なる

 したがって、これまでの事業戦略やそれを実行する事業計画は、根本から改定が迫られている。しかし、多くの大企業や中堅企業はなかなかそれを実行できないで足踏みしている。その理由は、図体が大きくなり過ぎて改革しても全体の形を変えるほどの大きな効果を出せない、ということがある。途方もなく時間がかかる、と感じていてあきらめの境地に陥ってしまっている。

 しかし、市場構造の変化を正しく理解して、買い手市場に対してセグメンテーションしてターゲットを絞り込み、「個客」に付加価値で満足度を提供することを着実にステップアップしていけば実現可能である。だから実行することに躊躇(ちゅうちょ)すべきではない。

いまだ引きずる20世紀型の経営指標

 ところが、変革の足を引っ張っているのがまだほかにあるのである。これまで表面化しないで隠れていたが、実はそれが最大の障害であると言っても言い過ぎではない。その正体は、20世紀型の経営指標である。それが経営の常識のように相も変わらず幅を利かしていることである。経営指標を21世紀で勝ち抜く形に設定し直す。これが実行できるかどうか、それが大問題である。

 ここで20世紀の経営指標における目標設定について整理しておこう。20世紀は企業規模の拡大が最も重視された。経営指標の代表的なものとして売上伸長率が用いられた。創業期を過ぎ安定期に入った企業の事業計画で、年15%以上(5年で2倍の規模)の計画が当たり前のこととして目標値に設定された。その代わり、売上高経常利益率は3〜6%あれば十分であるとされた。

21世紀の経営指標 21世紀の経営指標

 20世紀、一時的であるが日本を世界のGDP(国内総生産)ナンバーワンにした製造業の力を示す指標として用いられたのが損益分岐点比率である。損益分岐点比率が80%ということは、売上高が80%に落ち込んでも赤字にならないということを意味する。企業規模を拡大する戦略を取る場合、万一、売り上げがダウンして赤字になるようではキャッシュフローがショートすることになりかねない。そこでとにかく損益分岐点比率を下げることが求められた。

 かつて事業計画を策定する場合、5カ年計画が一般的であり、5年後の損益点比率を大幅に下げることが経営トップから指示された。この比率を下げるには固定費を下げる、売上高の増大に伴う変動費の増分を抑え込むといったことが必要となる。

 ところが変動費の抑制よりも、まず先に固定費削減が重視された。それは損益分岐点比率の算出式を簡略化すると、比率=固定費/(固定費+利益額)×100となるからだ。つまり、利益額が同一の場合、固定費が小さければ比率が下がるわけである。かつての成長戦略では利益の額はそこそこで赤字にならなければさほど問題にならなかった。そこで固定費が「悪者」のようにやり玉にあげられた。とにかく削減することが至上命令のごとく目標となった。

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