ネット世代とは、物心ついた時からデジタルテクノロジーが身の回りに存在し、それを空気のように呼吸して成長してきた世代のことだ。具体的な年齢としてはおよそ30歳以下に相当する。今では「デジタルネイティブ」という言葉の方がなじみがあるかもしれない。
米国におけるネット世代は、ベビーブーム世代の子どもに相当する世代であり、人口構成的に大きな割合を占めている。故に、ネット世代の考え方や行動が社会やビジネスに与える影響は大きく、今後ますます加速していく。
一方、日本においては周知の通り、少子高齢化によりネット世代の全人口に占める割合は諸外国と比較してはるかに小さいため、その影響力は小さくなる可能性がある。これは日本経済の将来にとって重大な問題になるかもしれない。「(日本の)移民を受け入れない政策などが原因」と講演でも指摘したタプスコット氏の言葉には苦笑するしかない。
それはさておき、この世代に対して「ものを知らない」「社交スキルがない」「怠惰で努力をしようとしない」「暴力的」などの批判をよく耳にするが、タプスコット氏はこうした批判に真っ向から反論する。
実際、データに基づいて分析すると、ネット世代に対する批判は的外れであることが分かる。知能指数は増大しているし、ボランティア活動に参加する若者の数も増えている、と具体的な数字を挙げながらタプスコット氏は話した。
また、先ごろの米大統領選において、ネット世代の若者たちがFacebookやTwitterをはじめとするソーシャルメディアを活用した選挙活動を積極的に行ったことがよく知られている。タプスコット氏は、年長の世代によるネット世代への批判(あるいは恐怖感)はネット世代をよく理解していないことから生まれるものだと指摘する。ネット世代を冷静に理解し、彼らから学ぶべきというのが同氏の根本的主張だ。
これはある意味当然のことだ。ネット世代は世界に極めて大きな影響を与えている情報技術について、親の世代よりも深く理解しているからだ。このような現象をタプスコット氏は、ジェネレーションギャップならぬジェネレーション“ラップ”と呼んでいる。周回遅れの親の世代をネット世代が追い抜いているような状況だからだ。
後編では、年長世代がネット世代に学び、企業が将来、人事やマーケティングの分野でどのように取り組んでいくべきかについて、タプスコット氏の提言を紹介する。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授