フィードバックとは、現在の自分自身の言動に対する、まわりのメンバーからの客観的な見え方である。自分が思っていることと他人が思っていることが異なるということは往々にしてある。フィードバックを受け取ることで、自分の良いところ、悪いところを客観的に知ることができ、継続すべき点や改善すべき点を自分自身で見出すことが可能になる。
360度フィードバックの制度を導入している組織に属しているのならば、そのフィードバックを素直に受け入れるよう心掛けて欲しい。もしそのような環境にない場合には、「わたしがもっと良いリーダーになるためには、どこを改善したら良いと思いますか?」と部下に率直に聞いてみるとよい。
ただし、部下からフィードバックを受ける上で留意しておくべきことがある。部下がリーダーに対して対面もしくはメールで率直にフィードバックするにはとても勇気が必要で、一般的にはどうしても歪曲したフィードバックになってしまうことがある。
フィードバックをもらうなんて恥ずかしいと思われるかもしれない。しかし、部下に率直に話してみると、案外意見を言ってくれるものである。わたしが主催するスクールに参加している某アパレルメーカーのA氏は、部下からフィードバックを受け取ることを実践した。「自分は変わりたいと思っているので、フィードバックが欲しい」。彼は最初、自分が惨めな思いをするのではないかと危惧していたが、部下たちはとても協力的でほっとしたという。
フィードバックをもらってみると、自分では部下とフラットな関係だと思っていたのだが、部下はレイヤー(上下の関係)があると感じていることが分かった。何気なく「ああしたらいい」とアドバイスとしていったことが、部下にとっては命令に聞こえていたのである。A氏は責任を認識せずに発言していたこと、自分の都合のいいように解釈していたことを反省したそうだ。部下からフィードバックをもらってからは、心穏やかに他人の話を聞けるようになったという。
なお、フィードバックをもらうと、ついつい反論をしたり、言い訳をしたくなる場面もあるだろう。しかし、そこは何も言わずに「ありがとう」と言うように努めてほしい。時に的外れなことを言う人が出てくるかもしれない。ただ、実践するかどうかは自分が決めればいいわけで、違うと思ったならば実践しなければいいだけである。ビジネスコーチングでは「フィードバックは改善への贈り物」と考える。大切な人からもらった贈り物にケチをつけないのと同じである。
自問自答をすることで自分自身が改善点を常に意識するようになり、フィードバックをもらうことで、自分が知らなかったことに気付かされる。そうした改善に取り組むことで、リーダーは常に進化し続けることが可能になる。
進化し続ける永ちゃんのように、これからの企業にはカッコいいリーダーが欠かせないのである。
(編集部より:このコラムは今回が最終回になります。1年半以上にわたりお読みいただきありがとうございました。来春より細川馨氏の新連載がスタートします。乞うご期待ください)
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細川馨(ほそかわ かおる)
ビジネスコーチ株式会社代表取締役
外資系生命保険入社。支社長、支社開発室長などを経て、2003年にプロコーチとして独立。2005年に当社を設立し、代表取締役に就任。コーチングを勤務先の保険会社に導入し、独自の営業システムを構築、業績を著しく伸ばす。業績を必ず伸ばす「コンサルティングコーチング」を独自のスタイルとし、現在大企業管理職への研修、企業のコーポレートコーチとして活躍。日経ビジネスアソシエ、日経ベンチャー、東商新聞連載。世界ビジネスコーチ協会資格検定委員会委員、CFP認定者、早稲田大学ビジネス情報アカデミー講師。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授