景気の先行指標には明るい材料もある。例えば、10月分景気動向指数・速報値の先行CIは8カ月連続の上昇となった。また機械の設備投資の先行指標である10月分機械受注(除船電民需)の前月比はマイナス4.5%となった。3カ月ぶりの減少だ。9月分が同プラス10.5%と高い伸び率だった反動の面が大きい。季節調整済みの水準は7045億円だ。2009年7月分の6647億円が史上最低水準だが、これよりはだいぶ高い水準だ。
2009年10〜12月期の見通しは前期比プラス1.0%の見通しだ。見通し達成のためには残りの2カ月が各々前月比マイナス1.0%でよい。前月比ゼロなら10〜12月期は前期比プラス2.1%程度になる。機械受注の基調が増加に転じ来年春ごろにはGDPベースの設備投資の前期比も増加基調に変化するものと期待したい。
2010年は最初もたつく局面があっても、年後半に向け緩やかな景気回復が続く可能性が大きいと考える。
身近なデータも景気にとってプラスに作用しそうなものが多い。2009年は、前年と違い日・米とも野球が景気の下支え要因になってくれたようだ。米国ではヤンキースが9年ぶり 27回目のワールドシリーズ制覇となった。1973年から2008年の各リーグ優勝チームと、実質経済成長率との関係を見ればヤンキースと景気の関係は明らかだ。
同期間にヤンキースは最多の10回のリーグ優勝をし、うち6回ワールドシリーズを制覇している。リーグ優勝時の実質経済成長率は平均で3.86%と、1973年から2008年の成長率の平均2.99%と比べ高いレベルで安定しているし、ワールドシリーズ優勝時の平均はなんと4.53%に跳ね上がる。ヤンキースの「経済効果」はずば抜けていることが分かる。
2009年の米国はリーマン・ショックの影響で統計上はマイナス成長になってしまうが、ヤンキースが勝ち星を重ね出した夏場以降は景気回復局面である。そして松井秀喜である。ヤンキースのワールドシリーズ制覇の最大の功労者だ。ポストシーズンは、尻上がりに成績を上げて、松井はフィリーズとの対戦で6割1分5厘という驚異的な打率を残し、MVPに輝いた。人気チームの優勝や人気選手の活躍は、多くのファンの消費マインドに火をつける。ヤンキース松井の活躍は、米国のみならず、日本の景気回復にも一役買うことにつながろう。日本では巨人が日本一を奪取した。巨人の勝利は日本経済にしっかり貢献しよう。
なお、企業の広告費の代理変数と言える大相撲の懸賞は名古屋場所から九州場所まで3場所連続で前年を上回っている。九州場所千秋楽結びの一番には47本の懸賞がかかった。これは九州場所としては史上最高であり、明るい材料と言えよう。
宅森昭吉(たくもり あきよし)
「景気ウォッチャー調査研究会」委員。過去に「動向把握早期化委員会」委員、「景気動向指数の改善に関する調査研究会」委員などを歴任。著書は「ジンクスで読む日本経済」(東洋経済新報社)など。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
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明治学院大学 経済学部准教授