新たなイノベーションを創造するIT経営ロードマップの“本質”とは?(2/2 ページ)

» 2010年01月29日 07時45分 公開
[岡崎勝己,ITmedia]
前のページへ 1|2       

情報システム部門が企業改革を推進する?

 次の「共有化」では、見える化が完了した情報や業務を共有化し、部門の壁、さらに業種や業態を超えた社内外との連携を実現するための情報基盤の構築や、バリューチェーンの最適化が最大のミッションとなる。そのために、まずは自社のバリューチェーン全体を見渡した上で共通化の目的や範囲を確定し、メリットやコストのバランスを考慮し、最適と判断される方法で業務を再構築するわけだ。もちろん、再構築後に併せて、場合によっては組織制度を見直す必要があるほか、従業員への教育も十分に行わなければならない。

 その成功の鍵を握るのが、すでに述べた経営者自身の業務改革への積極的な関与である。ITによる効果を最大限に高めるためには、情報システムの構築に加え、組織と業務の変革を欠くことができない。また、業務改革を行う上では全社的な視点で部門間の利害を調整する必要があり、それらの判断を的確に下すのは経営者以外では困難なためだ。

 もっとも、社内で最もITに精通し全社業務を知り得る立場にあるのは情報システム部門である。であるならば、情報システム部門が業務改革を推進する役割を担っても、何ら不思議ではないと三谷氏は指摘する。ただし、現実には情報システム部門主導での業務改革は、現状では極めてまれなのが実態だ。

「残念ながら現状では、情報システム部門の多くがいわばベンダーの窓口や現場の御用聞き組織という域を脱していない。IT経営の重要性がさらに高まる中で、全社の業務プロセスまで責任を終えるよう、情報システム部門にはさらなる高度なスキルの取得も今後は求められるはずだ」(三谷氏)

情報の使い方を見直し、新たなイノベーションの創造を

 最終段階の「柔軟化」では、情報を迅速かつ最適な形で活用できるよう、事業構造の転換に取り組み、経営環境の変化に柔軟に対応できる環境を整えることが経営者のミッションとなる。併せて、柔軟に組み替えるべき業務を特定し、迅速に対応できるよう、業務やシステムのモジュール化を促進することも重要となる。

 「見える化」、「共有化」、「柔軟化」の各段階のポイントを紹介した後、三谷氏はIT経営の最終的な狙いは情報活用にあると断言し、次のように講演を締めくくった。

「組織的知識がいかに生み出されるのかを説明した一橋大学大学院教授の野中郁次郎氏らのSECIモデルからも分かるように、情報の結合と分離が繰り返されることで新たなイノベーションが創造される。言い換えれば、既存の情報の利用方法を見直すことで、新たな付加価値が創造できる可能性は決して小さくないのだ。ITはいわばアンプに過ぎず、情報を最大限に活用できる仕組みの整備こそ、IT経営ロードマップの“肝”と言えるのだ」(三谷氏)

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

根来龍之

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

小尾敏夫

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

郡山史郎

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

西野弘

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

森田正隆

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆