若くて優秀なSEがインドや中国などで大量に育つ中、技術に固執するだけの日本のSEに未来はない。日本のお家芸である組織力を最大限に生かした働き方が求められているのだ。
本書の冒頭に、衝撃的なエピソードがある。著者がインドのソフトウェア開発の企業から、SEを一人派遣してもらったときのこと。そのインド人SEは日本の中堅SEの倍以上のパフォーマンスでプログラムコードを書いていく。野球で言えば「イチロー」級の人材を送り込んでもらったと思っていたのだが、実は職務経験の浅い、現地では「最下層」のSEだということが後で判明したのだ。
インドでは最下層にあたるSEが、日本では軽々とトップ級の働きをしてしまう。この現実を思い知った著者は、あえて日本のSEに「技術バカ」では生き残れないと説く。圧倒的な母数から選抜されたインドのSEと違い、日本でSEは不人気職種である。これから何年もかけて教育環境を整えたとしても、その結果にあるのは横並びの技術力だけだ。それでは、グローバルにビジネスが展開する「ITサバイバル時代」に、わが国のSE、ひいては日本という国の優位性は生み出せない。
新時代のSEに求められるのは、単なる技術屋ではなく、ビジネス全般にかかわる「ビジネス・エンジニア」として生きていく姿勢である。本書ではそれを、次の7つの力に因数分解した。
(1)リーダーシップ(2)コスト感覚(3)営業力(4)精神的タフさ(5)組織第一主義(6)未来を見る力(7)覚悟。
中でも組織第一主義、組織の勝利のためにみなが団結し、労を惜しまずハードワークをこなす精神を、著者はかつての日本の強みだったと主張する。個人の能力だけ見たら、必ずしも世界と伍するとは言いがたい日本人。しかし、チームのために身を投げ出す「大和魂」の精神を持って組織戦で挑めば、世界を相手にしても勝利を重ねられるはずだ。また本書で紹介する「海兵隊に学ぶ組織モデル」「事業部長立候補制度」「徹底的なプロフィット管理」などの制度を実施すれば、勝利はより確実となる。
「生き残るSE」の条件は、何もシステムエンジニアに限ったことではない。それは同時に「生き残る会社員」の心得であり、「生き残る企業」のプリンシプルと言える。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授