このような上司の問題点は何であろうか。わたしは「ビジョンがない」の一言に尽きると考えている。特に「自分がどういう人間になりたいか」というビジョンがないのである。会社が終身雇用を保障することが当たり前の時代に入社したため、「会社=自分」であり、会社がない自分は何なのか、自分自身がどうなりたいのかというビジョンを持ち合わせていないのだ。
終身雇用制度が崩れつつある今の時代は、会社や上司、周りの人がどうこうではなく、自分自身のビジョンを持つことが欠かせなくなっている。自分がどういう人間になりたいかという考えを持たずにいることは、もはや時代遅れなのだ。
上司(リーダー)の役割は次の2つだと考えている。
1. 部下の基本的欲求を満たす
2. 部下の成長欲求を満たす
基本的欲求とは、成果を上げたことを評価されたり(行動に対する承認)、あいさつや声掛けをしてもらう(存在に対する承認)ことで満たされるものだ。かたや、成長欲求とは、ビジョンや強みを高めたり、価値観や仕事の進め方を尊重してもらうことで満たされる。
ビジョンがなく仕事をしない者が上司(リーダー)の役割を果たせるはずがない。ビジョンを持たず、仕事もしない上司であるならば、部下のモチベーションは確実に下がるだけである。
そうは言っても、部下の立場からすれば上司を簡単にすりかえることはできない。では、ビジョンを持たず、人に依存してばかりで仕事をしない上司を持つ部下は、どうしたらいいのだろうか。わたしからのアドバイスは次の通りである。
そんな上司とはかかわるな!
かかわっている時間が無駄!
「これこそビッグチャンス」と考えろ!
たとえ上司であっても、人の粗を探し、不平不満ばかり口にして働かないような人間の相手をする必要はない。もちろん業務に支障をきたさないよう、やるべきことはやらなくてはいけない。ただし、最低限のことをやればそれで十分だ。その上司が思いつきで言ったようなことにいちいち気をもむ必要はない。
そんなことに時間と労力を割くのであれば、別のことにエネルギーを使うべきである。あるいは、そのような上司を持った場合には、それを嘆くのではなく、自分自身が自立するビッグチャンスだととらえることだ。自分なりに研究して、自分のビジョンや強みを見つけ、自己研鑽に励み、プロフェッショナルなスキルを身に付けることを目指そう。駄目な上司を持ったからこそ、大きなチャンスなのである。
ここでお勧めしたいのが、自分自身を成長させてくれるメンターやコーチを持つことである。上司が手本にならないのであれば、会社の別の人でもいいし社外の人でもいい。お手本となる人、自分を指導してくれる人と出会い、接する機会を持ってほしい。彼らからアドバイスをもらい、自分の成長の糧にするのである。そうすることで、自分がどんな人間でありたいか、何を目指したいのかが自ずと見えてくるはずである。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授