金融機関との付き合いは会社経営には欠かせないもの。優良会社だと認められるのを待つばかりではなく、自社の魅力を積極的に伝えることにより可能性が広がる。
この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。
この20年近く、金融機関の融資審査の風景があまり代わり映えしないと感じるのは、わたしだけでしょうか。バブル崩壊後の金融危機を経ても、いまだ審査手法に斬新さが見られないとぼやいてばかりもいられません。それも経営環境の1つだとあきらめ、どうすれば資金調達が円滑にできるのかを考えることが、会社の成長にとって1番の得策になります。
では何が会社として取り組むべきポイントなのでしょうか。それは会社が金融機関向けの情報発信のコツを知るところにあります。これができていないばかりに、会社の成長機会が阻害されたり、経営危機を招来することになります。
株式市場ではIRという言葉で当たり前になった株主向けの情報公開手法も、対金融機関向けのものとなると、いまひとつ体系化されていないのが実情です。日本においては大多数の会社が未公開会社であるというのに、不思議な話です。
そんな金融機関とうまく付き合っていくコツは3つあります。1つ目は自社を正確に把握すること。2つ目は経営数値を業界の標準的な値に近づけること。3つ目は、いかに自社を金融機関に分かるよう魅力的に伝えるかということになります。もちろんこのほかに保証や担保も重要な要素ではありますが、実は審査としては2次的な要素であったりします。
1つ目と2つ目については、業種として標準的な財務体質を備えているか、また収益が上げられる体質なのかといったことを、数字で正確に自社のことを語れる準備が必要になってきます。金融の世界では、会社はとりわけ数字で判断される存在だからです。さらに、財務体質を健全にし,金融機関での審査の土俵に上がる努力も必要です。
ただそうは言いつつも、それだけでは情報不足です。そこで3つ目の要素が必要になってきます。それは会社の特徴、とりわけ魅力について、うまく伝える必要が出てくるのです。つまり数字を解釈するための情報が必要となるのです。例えばソフトウェア開発の会社など、外部者からすると思った以上に理解し難いものです。良くあるのが技術の優位性ばかり説明することです。ただそればかり説明されても、門外漢にはなかなか理解できません。ちょうど自分の家族にも分かるように説明するといいかもしれません。こういった情報が出そろって、円滑な資金調達への第1歩が踏み出せるのです。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授