では、いかに論点を抽出、設定すればよいのだろうか。内田氏は右脳型のアプローチ、すなわち直感や感覚が重要だという。具体的には、「当たりを付ける」「筋の良しあしを見極める」ということである。前者は、釣りでポイント選びをする際に使う「当たりを付ける」とほぼ同意であり、内田氏の経験によれば、経営者や企業のマインドセットが低いところにチャンスが眠っており、そこに当たりを付けるなどのやり方があるとしている。
例えば、経営者が営業出身であれば財務や生産開発に、あるいは食品メーカーであれば他業界にこそヒントがある。「良い経営者ほど勘が働く。しかし、これは決して当てずっぽうというわけではなく、経験に基づいた勘である」と内田氏は話す。
論点抽出においては、解くべき問題の筋の良しあしも大きく影響するという。悪い問題であれば解くのに時間が掛かったり、答えがないというケースもある。内田氏は「論点には、解決できるかどうか、解決によって成果が上がるかどうか、実行できるかどうかという条件があり、その1つでも欠けると本当の問題解決は難しい」と強調する。
ここまでの話の中で論点抽出の方法論は理解できたものの、先述のように、論点は人によって異なり、本人自身が気付いていないことも大いにあるため、その引き出し方が難しいと感じている読者も多いのではないだろうか。論点を引き出すにはさまざまな手法がある。「まずは仮説をぶつけてみる」(内田氏)というやり方もあれば、ヒアリングを重視しとにかく傾聴に徹するというコンサルタントもいるという。さまざまな形があるが、最終的には自分にあったやり方を見つけた上で本質的な課題に迫ることに変わりはない。
「クライアントの本意を理解して取り組むかどうかで、結果的にクライアントの満足度が大きく変わるのだ」(内田氏)
では、どうしたら論点思考の力を高められるのか。内田氏は、「常に問題意識を持って課題解決にあたること」、「視点を変えること」、「頭の中にいろいろな引き出しをため込むこと」の3点を挙げた。まず、問題意識を持ち続けるためには、人の言葉を鵜呑みにせずに疑ったり、多面的に考える癖をつけたりすることが効果的だという。視点は、さまざまな場所から物事を見る「視野」、常に組織の2段階上のポジションで物事を考える「視座」、切り口を変えて色々なレンズを通して物事を見る「視点」に大きく分けられる。
特に強調したのが“鳥の目”と“虫の目”を持つことである。「経営者や経営企画部門は高い場所で物事を考えがちなので現場の泥臭さを理解しにくい。一方で現場の視点だと部分最適になりがちである。互いの立場から物事を眺めることが重要だ」と内田氏は説明する。
「論点思考はスキルや技術ではなく、1つのものの見方、考え方である。一朝一夕で身に付くものではなく、日常から考え続けることの積み重ね、経験によるものだ」(内田氏)
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授