企業は数え切れないほど多くの問題を抱えており、それらをすべて解決するのは困難である。重要なのは企業にとって真の問題を見極め、それに対して施策を打っていくことである。
「経営における最も重大なあやまちは、間違った答えをだすことではなく、間違った問いに答えることだ」(Men, Ideas and Politics)
こう述べたのはドラッカーである。企業は数え切れないほど多くの問題を抱えていて、その問題をすべて解決しようと思っても、時間もなければ人も足りない。仕事には期限があり、期限内にこなすことのできる工数も限られている。そうした状況で解くべき問題を設定し、選択し、それに取り組み、成果をあげることが現代のビジネスパーソンに必要である。つまり、成果をあげるには真の問題を選びとることが重要になると著者は言う。
著者が25年間勤めたボストン コンサルティング グループ(BCG)では、この真の問題を「論点」と呼ぶ。そして、論点を設定するという、問題解決の最上流に当たるプロセスが「論点思考」である。論点を設定することにより、考えるべきことが絞られ、問題解決のスピードは上がり、解決策を実行したときの効果も高くなる。
成果を出すには、「正しい答え」でなく「解くべき問題=論点」を見つけることが最優先課題となる。「間違った問題」に取り組むことは大いなる時間の無駄であると著者は断言している。
本書は論点の見つけ方を徹底的に解説する。著者の主張の中ではっとさせられるのは、「論点は動く」ということである。これは試験問題を解いている途中で、別の問題をわたされるようなものだ。学校の試験ではあり得ないが、ビジネスでは日常茶飯事である。
例えば2008年前半までは資源高騰や需要急増へ対応しながら生産をどう増やすかが論点であったが、2008年のサブプライム以降は売り上げ急落にどう対応するかが問題になった。ほかにも「論点は人(=上司、クライアント)によって異なる」「論点は環境とともに変化する」「論点は作業を進める中で進化する」など、ベテランコンサルタントならではの見解が随所で披露される。
コンサルタントの世界では、与えられた問題の分析ができ、その問題が解決できるというだけでは、コンサルタントとして半人前としか認められない。一流のコンサルタントは論点が何かを見つけ出す能力に優れているのだ。そして、パートナークラスのコンサルタントであれば、調査や分析作業は部下に任せることがあっても、論点の設定だけは自らが徹底的に行なう。
本書はこれまで一流コンサルタントの頭の中にしまい込まれていて名人芸と思われていたものを、読者の分かる形に分解し、やさしく説明している。著者は自らの経験を解説するのみならず、BCGの同僚にも論点の設定方法について取材を重ねた上で本書をまとめている。
日ごろの業務の中で「上司に言われた問題に取り組んでいるが、これでいいのか」、「本当の問題は別にあるのではないか」と疑問を持っている人や、部下に問題や課題を与える立場にある管理職の人も必読の一冊である。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授