ITmedia エグゼクティブセミナーリポート
不況を人材育成の追い風に ITR・内山氏
アイティメディアは3月17日、経営層に向けたセミナー「第14回 ITmedia エグゼクティブセミナー」を開催した。基調講演に登壇したIT調査会社、アイ・ティ・アール(ITR)の内山悟志代表がIT部門における人材のあり方について考えを示し、企業は今こそ人材の育成に投資するよう促した。
昨今の世界的な不況により企業の経営状況が危ぶまれる中、従業員のリストラを断行する企業が後を絶たない。しかしながら、人材こそ企業の経営資産であり、簡単に手放すものではなく、育成することで企業にとって大きな武器となる。今回の不況はIT部門にも大きな打撃を与えたが、内山氏は人材育成における2つのチャンスが生まれたと強調する。1つ目は、IT投資が抑制されることで次々にシステム構築ができないため、長期的な内部マネジメント改革に目線を移すチャンスであること、2つ目は、経営者から企業のITそのものに対する期待が高まっており、変革が求められているというチャンスである。
例えば、業務のアウトソーシングはIT人材を育てる1つの機会といえる。経営者にとってはシステムの開発、運用のコストを下げるためにアウトソーシングの動きを活発化していきたい一方で、IT部門の現場としては開発や運用の実行能力を放棄することによる技術の空洞化を懸念するのが通例であるが、たとえITにかかわる大半の業務をアウトソースしたとしても、「企業側で残さなければならないコアスキルは何か、コア人材をいかに育成していくのかが非常に重要」(内山氏)となるのである。同様に、クラウドコンピューティングによって自社で抱えるシステムが縮小していくとしても、何かしらの機能が社内に必要であることは変わらないのだ。
ベンダーの言いなりにならないために
では、どのようにIT人材を育てていけばいいのか。内山氏はIT部門が備えるべき必須の能力として、「要件定義力」と「SLA(Service Level Agreement:サービス品質保証契約)」、「提案の評価力」および「RFP(Request For Proposal:提案依頼書)」を挙げた。前者の2つはユーザー部門と接する際に必要なスキルで、後者の2つはITベンダーとのやり取りにおいて欠かせないスキルである。
「ユーザー部門以上に業務を知っている必要はないが、少なくともコミュニケーションがとれるほどの知識は必要だ。ITに関しても最先端の細かい技術までを把握している必要はないが、まったく知らなければベンダーの言いなりになってしまう」(内山氏)
実際に、ユーザー部門の業務やベンダーが提案する技術を知らずに失敗した企業が少なくないと内山氏は話す。
こうしたスキルを身に付けるためには、人事ローテーションなどを含めたキャリアマネジメントが重要だという。特に内山氏は「若いうちにIT部門に人を送り込むべきだ」と説く。IT部門には情報システムを通して企業全体を見る目、論理思考、手順化や標準化のノウハウ、全体最適の視点などを備えた人材がそろっており、こうしたスキルはIT部門のみならず、企業のあらゆる部門において有効なものとなるからだ。
IT部門は、かつてのように、ネットワークなどのインフラを整備し、アプリケーションを開発し、システムを安定稼働させるだけの役割ではなく、企業がビジネスを遂行する上で不可欠な存在となり、責任範囲は確実に広がっている。そのため、先導的な役割を担うCIO(最高情報責任者)やIT部門長は「より幅広い視野を持ち、ITにかかわるマネジメントの全体像と、(自社だけでなく他社の取り組みも含めた)ベストプラクティスを理解することが肝要だ」と内山氏は述べる。
「IT部門で経験を積んだ人材をユーザー部門に送り出し、ビジネスとITの橋渡し役として、ユーザー部門におけるITの活用に貢献させることが望ましい。CIOは優秀なIT人材をどんどん社内に輩出していくべきだ」(内山氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
ITmedia エグゼクティブのご案内
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。 勉強会のスケジュールはこちら
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入して申請ください。審査のうえ登録させていただきます。
- 入会条件:
- 上場企業および上場相当企業の課長職以上
※入会は無料です
エグゼクティブコンテンツ
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
富士通、新方式の量子コンピューター試作機を世界初開発 ダイヤモンドで計算精度を向上
-
2
「法律以前に、やるべきことがある」──ANA和田氏×SBT辻氏が語る、能動的サイバー防御の本質
-
3
セキュリティは「使えてなんぼ」 認証との偶然の出会いから22年 - NTTデータ 星野氏
-
4
「AI社員」活用、NECは無人部署 DeNAには17体、南場社長「けなげ」と太鼓判
-
5
中国人も台湾人も夜遅くまで働いている 日本人だけが「働き方改革」でいいのか
-
6
Agentic AI前提でセキュリティを作り直す - Sansan 鴨志田氏
-
7
教養は、ビジネスパーソンの武器になる――世界のエリートが学んでいる教養書 必読100冊を1冊にまとめてみた
-
8
新幹線にスマホ10台! 説明前にまず自分で確かめる - Zimperium 成田氏
-
9
AIペットロボット「モフリン」好調、カシオが新規事業に注力 4本目の柱に育成 月刊Biz・switch
-
10
「技術を知らなければ、適切なリスクは取れない」 マネーフォワードCISO 松久氏
ITmedia エグゼクティブ SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaエグゼクティブをフォロー