結果、「無難」な方を採用することになり、「無難」な結果を生むことになります。
では、数年前から何が変わったのか。
企業が本気でIT革命を実行しなければビジネスの存続が危ぶまれるような時代が来たといえると思います。この状況で、少なくともCIOの位置付けが変わり、以前よりも積極的にITコンサルタントやITソリューションベンダーの方が登用されるようになりました。
交渉相手をよく知る人が社内に来たことにより、ITコンサルタントやITソリューションベンダーの提案を丸のみせず、サービスレベルを変えずに大きくコスト削減に成功した企業もありました。
これは、考え方によっては日本のベンダーの競争力強化にも役立っているとも言えます。クライアントとベンダーというある種の上下関係が崩れ、ビジネスパートナーとしての関係が求められることになります。提案力や差別化要素を持たないベンダーはコスト競争に入らざるを得ず、インドや中国企業と競合し、一気に情勢は厳しくなります。
また、CIOが既存業務を深く知らないこと(固定観念にとらわれない)で、新しい視点・発想でのIT化が生まれる企業も出てきました。
ここまで書くとITコンサルタントやITソリューションベンダーからCIOを採用することはメリットばかりのようですが、さまざまな落とし穴もあります。彼ら自身がいかに早く「当事者」としての意識を持てるかは1つの大きな成功要因になります。
どのポジションでも同じことが言えますが、前職との比較をやめることは大切です。コンサルタントがよく使う「以前の職場では……」というのは周りの人は聞いていてあまりいい気持ちはしません。
事業会社ではIT自体はビジネスを成功させるためのツールです。ITコンサルタントやITソリューションベンダーからCIOへの転身は、ビジネスの主役から存在感ある名脇役への転身でもあるのです。
ITコンサルタントやITソリューションベンダーからCIOへの転身はまだ始まったばかりですが、既にそういった転職をした方々が成功することによって、その傾向はより強いものになっていきます。また、既に幾つかの成功例はありますが、先進的なIT化を成功させた企業の方々がITコンサルタントとして転身するという傾向も今後強まってくることでしょう。
戦略系コンサルタントが経営者に転身する例は少なくありません。また、そういった方々が実績を引っ提げてコンサルタントとして復帰することもよくあります。
ITの業界の中でも今後は同様にハイブリッドな人材が求められる傾向が強まることが予想されます。彼らの活躍が、グローバルでの日本の競争力強化に少なからず貢献することを期待して、今後も業界動向をウォッチしていきたいと思います。
岩本香織(いわもと かおり)
G&S Global Advisors Inc. 副社長。米国の大学を卒業後、アンダーセンコンサルティング(現:アクセンチュア)入社。東京事務所初の女性マネジャー。米国ならびにフィリピンでの駐在を含む8年間に、大手日系・外資系企業のビジネス/ITコンサルティングプロジェクトを担当。 1994年コーン・フェリーに入社、1998年外資系ソフトウェアベンダーを経て、1999年コーン・フェリーに復帰。2002年から2006年までAsia/Pacificテクノロジーチームの代表。2010年9月より現職。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授