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» 2010年11月22日 07時30分 公開

日本政府も熱視線、アジア新興国市場の成長力女流コンサルタント、アジアを歩く(5/5 ページ)

[辻 佳子(デロイト トーマツ コンサルティング),ITmedia]
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バングラデシュの“ネットワーク”

 戸田氏とのお話の中で、わたしが感じたキーワードは「ネットワーク」であった。バングラデシュは狭い国土の中で強固なネットワークが張り巡らされており、バングラデシュの人々はそのネットワークを大切にしている。1つの取り組みから生まれた成果が、この強固なネットワークを通じて全国に広がったり、あるいはより大きな動きを生み出したりする可能性は大きい。

 例えば、先日、発表された雪国まいたけの農業によるソーシャルビジネスは、同社の強い意志だけでなく、JICAが1985〜1995年に実施した農業大学院プロジェクト(IPSAプロジェクト)で培われたネットワークが基礎になって実現したと言える。

 農業大学院プロジェクトでは、九州大学が中心となって専門家を派遣し、これまでの間、強固なネットワークをJICAとともに築いてきた。その九州大学、グラミン・クリシ財団、雪国まいたけが合弁会社を設立し、新たなソーシャルビジネスを展開するのである。

 JICAの取り組みについても、多くのお話を伺ったが、やはりこの「ネットワーク」がキーワードだと感じた。JICAの支援は、現場に踏み込み、成果を出して示すということだけで終わってはならない。バングラデシュのネットワークを生かして、その成果をバングラデシュ国内に広く展開し、社会変革を起こしていこうという戸田氏の思いが、わたしにはひしひしと伝わってきた。

日本企業へのメッセージ

 情緒的な物言いだが、両名の話からは日本および日本企業への熱い思いが伝わってきた。バングラデシュという地で、日本や日本企業について熱く語る姿を見て、わたし自身も励まされた。以下、彼らの話を基に、わたしなりに解釈し、メッセージを抽出してみた。

1.新興国およびバングラデシュを見る

 近年、どの企業も掲げるのが「顧客志向」だが、日本国内の消費者だけでなく、進出先の新興国、進出先のバングラデシュを顧客としてとらえ、何が求められているかという点を改めて確認する必要がある。日本や日本企業ばかりを見ていては、新興国に進出しても十分な成果を挙げられない。そこにいる人々と社会を中心に据えて、経済活動や支援活動を見極めなければならない。

2.ライバルから学び、打ち勝つ

 バングラデシュのインフラ整備状況には問題が多い。他方で、欧米や中国、韓国企業が、日本企業に先んじて進出を果たしているということは、それらの問題を解消もしくは極小化しているということだ。彼らがどのように問題に対峙したのかを学び、それを日本企業流に再構成する必要がある。既に進出している外国企業をしのぐ戦略を描かなければならない。

3.リスクを可能性に変える

 海外進出を検討するには、正確かつ詳細な情報やデータが必要となるが、バングラデシュにはそれがない。そのリスクをビジネスの可能性ととらえ、取り組む手段を考えれば、新たな形が見えてくる。

 例えば、ソーシャルビジネスとしてリサーチを進めることはできないか。インフラ整備とITビジネス、ITビジネスと教育を結びつけることはできないか。リスクを見て腰を引くのではなく、リスクを可能性として再考し、新たなモデルを作り出すことも必要である。

4.国を活用する

 JETRO、JICAの両機構は、長年にわたって、バングラデシュとの関係を持ち、強固なネットワークの中に入って活動を行っている。日本企業は、大小を問わず、こうした国の行政機関を活用し、バングラデシュやそのほか新興国への進出を円滑に、そして実り多きものにすべきだ。そして、相互に利益を得るための協働を実直に進めていくべきである。

著者プロフィール

辻 佳子(つじ よしこ)

デロイト トーマツ コンサルティング所属コンサルタント。システムエンジニアを経た後、アクセンチュア・テクノロジー・ソリューションズにて、官公庁や製造業等の企業統合PMIに伴うBPR、大規模なアウトソーシング化/中国オフショア化のプロジェクトに従事。大連・上海・日本を行き来し、チームの運営・進行管理者としてブリッジ的な役割を担う。現在、デロイト トーマツ コンサルティング所属。中国+アジア途上国におけるビジネスのほか、IT、BPR、BPO/ITOの分野で活躍している。


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