日本政府も熱視線、アジア新興国市場の成長力女流コンサルタント、アジアを歩く(1/5 ページ)

アジア新興国に対しては、日本政府や行政機関も熱い視線を注いでいる。民間企業とはとらえ方も異なるものの、日本の行政機関がアジア新興国進出をどのように考えているかを知っておくことは有効である。

» 2010年11月22日 07時30分 公開
[辻 佳子(デロイト トーマツ コンサルティング),ITmedia]

 アジア新興国に対しては、民間企業だけでなく、日本政府や行政機関も熱い視線を注いでいる。それぞれの機関によって役割や目的が異なるため、アジア新興国のとらえ方も異なる。だが、アジア新興国を新たなビジネスターゲットと考える日本企業にとって、それら日本の行政機関がアジア新興国やそこへの進出をどのように考えているかを知ることは有効である。

 本稿では、独立行政法人 日本貿易振興機構、および独立行政法人 国際協力機構のそれぞれの現地所長とのインタビューを基に、日本企業が認識すべき動向と今後の展望を伝える。

 これまで3回にわたり、アジア新興国バングラデシュについて、民間企業からの観点を中心にレポートしてきた。これらの民間企業は、独自の企業戦略とそれを実現する方策を持って、アジア新興国に進出しているとはいえ、わたしがここバングラデシュで感じるのは、日本政府や行政機関の活動があってこそ、それらが実現している点である。

 そこでわたしは、独立行政法人 日本貿易振興機構 ダッカ事務所所長 鈴木隆史氏、独立行政法人 国際協力機構 バングラデシュ事務所所長 戸田隆夫氏の両名から、バングラデシュの現状と今後、日本企業のバングラデシュ進出の状況などについて、お話を伺う機会を得た。言うまでもなく、両機構は、それぞれ役割も事業内容も異なるため、バングラデシュのとらえ方も異なるところがある。しかし、いずれもバングラデシュの実態であり、それらを重ね合わせることで日本企業が採るべき道筋が見えてくる。

JETRO ダッカ事務所所長 鈴木氏に聞く

JETRO ダッカ事務所

 独立行政法人 日本貿易振興機構(JETRO: Japan External TRade Organization)は、独立行政法人日本貿易振興機構法(第3条)に示されているとおり、「わが国の貿易の振興に関する事業を総合的かつ効率的に実施すること並びにアジア地域などの経済およびこれに関連する諸事情について基礎的かつ総合的な調査研究並びにその成果の普及を行い、もってこれらの地域との貿易の拡大及び経済協力の促進に寄与すること」を目的としている。

 主な取り組みとしては、中小企業などの国際ビジネス展開の支援、地域活性化に向けた対日投資や地域間連携の促進、わが国の調和ある通商経済関係構築に役立つ取り組みなどが挙げられる。

すべてにおいて中間層のない国

 JETROは、海外55カ国・72事務所を有しており、バングラデシュのダッカにも事務所を構えている。わたしは、ダッカ事務所所長である鈴木隆史氏を訪ね、お話を伺った。

 まず、バングラデシュの社会構造について、鈴木氏は、すべてにおいて中間層がない国と称した。国民の階層も一部の富裕層と大多数の貧困数という二極で中間層がない。国内企業の階層に至っては、財閥系の大企業のみであり、それ以下は存在しないのが実状だという。これは、新興国によく見られる構造ではあるが、バングラデシュはそれが顕著なのである。

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