チリ鉱山落盤事故の被害者33人全員が無事救出されたが、その救出劇の背景の一つにドラッカーの愛読者であったリーダーの存在があった。
増岡直二郎氏による辛口連載「生き残れない経営」のバックナンバーはこちら。
過日、チリ鉱山落盤事故の被害者33人全員が無事救出されたが、その救出劇の背景の一つにドラッカーの愛読者であったリーダー、ルイス・ウルスワが沈着冷静にリーダーシップを発揮し、メンバーに役割を与え、やる気を引き出したことが幸いしたと、ある識者によってテレビで紹介された。また、ドラッカーの評判が上がったか。一方で、そんなドラッカーと結びついたうまい話があるものか、「こじ付け」だという意見もある。
しかし、こじ付けと切り捨てるのも1つの考え、また過日取り上げた「もしドラ」が萌え系の作り話で童話の世界だと断じるのも1つの考えだが、どちらも素直に参考にして己の日頃の経営・管理を反省するきっかけにするのも1つの考えだ。その方が得だともいえる。
チリ事故コメントの内容の真偽は別にしても、チリの事故で鉱員たちの強みを生かして、電気設備のメンテナンス、2次災害の可能性のある危険個所の見張り、鉱内生活の記録、広報などの役割をメンバーに与え、やる気を引き出して、生きるための張りを持たせ、密閉された極限状態の状況下で全員が協力して、生き延びたとすれば、立派なマネジメントであろう。
しかし、ある中堅企業の経営者が言った、「役割とやる気については、鉱山落盤事故という緊急事態での限定集団の限定期間のマネジメントだから分かりやすいが、われわれ企業では全員既に役割が決まっていて、モラールアップに日々腐心している。当たり前のことだ」
では「当たり前」なのに、なぜビジネスマンの「働きがい」の意識が、入社時から後年変化し、60%以上も否定的になるという問題が出てくるのか(第1表)。
結局入社当時と比べて「働きがい」が下がっているということは、10年も経つと従業員の役割があいまいになり、やる気が引き出されていないという1つの現れなのだろう。
一方、現在「会社で働きがいを感じているか」という意識調査によると、約30%以上が「感じていない」とし、「(強く)感じている」のは40代前半で約20%しかいない(第2表)。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授