心を忘れた情報は組織を破壊する生き残れない経営(1/3 ページ)

隣席の同僚や後方座席の上司と直接言葉を交わさず、ほとんどメールでやり取りするなんて、今や常識だ。多くの職場では、もっともっと恐ろしいことが平然と起きている。

» 2011年02月22日 08時00分 公開
[増岡直二郎(nao IT研究所),ITmedia]

 隣席の同僚や後方座席の上司と直接言葉を交わさず、ほとんどメールでやり取りするなんて、今や常識だ。多くの職場では、もっともっと恐ろしいことが平然と起きている。

 大手エレクトロニクスメーカーA事業所でのこと、そろそろ管理職定年(56才)を迎えるB課長が出張から帰りPCを立ち上げると、部長からメールが入っていた。「明日から課長職を外れてもらう。今後は部付きとする」。そのうち口頭で示達があると思っていたら、一切沙汰がない。後任への引継ぎ、今後の部付担当業務の内容や心構えなど、部長から本人へ話すことが山ほどあるはずなのに……。Bは自分の処遇をこのようにメール1本で処理されるほど、過去部長との関係が悪かったわけではないと言う。当然この出来事のうわさは広がり、従業員のモラールに影響する。しかし不思議なもので、この種のうわさは下に広がるが、上には行かない。従って、部長が本件で上から注意をされて反省する機会はまずない。

 同メーカーのB事業所では、関係者が管理データをいつでもオンライン検索できた。例えば、業績に関するデータとして部署ごとの業績結果、そこに到る製品原価構成、原価低減状況、仕掛状況、作業効率などを、また営業受注案件に関するデータなら顧客状況、商談の状況、受注案件の進度状況などなどを検索できた。関係者は、必要な場合データを検索し、関係者とメールで連絡を取る。便利といえば便利だが、それが習い性になっているため、状況説明や、指示や依頼事項などの微妙な内容が、メールで伝わり切らない場合があっても、関係者は一向に気にする気配はなく、直接コミュニケーションを取ろうとする様子はあまりない。考えてみると、A・B事業所ともに根っこは同じ所にあるのかもしれない。

 中堅情報機器メーカーC社で、定期職制変更と管理職人事異動があった。人事示達方法について過去トラブルがあったため、役員会で取り決めをしていた。人事が承認された日のうちに該当役員から当事者へ内示をし、翌日の各部門の朝礼で周知徹底をすることにしていた。しかし、今回の異動についてD取締役は配下の該当者に内示をし忘れた。異動の当事者たちは、翌日あちこちの朝礼で自分たちの名前が挙がっているのに驚き、2、3日後にDに伺いを立てた(即刻伺わないところが、これまた問題でもある)。Dは「あっ、忘れていた、すまん」の一言で、悪びれた風が全然ない。当事者の心情を全くくみとっていない。

 C社でDのミスを「またか」という雰囲気で重視されないということは、C社に相当根深い情報障害があり、組織の機能不全や社員のモラール低下が恒常化している証と言える。

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