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» 2011年03月30日 07時00分 公開

50代ミドルを輝かせるキャリア開発支援:50代社員を輝かせるキャリアデザイン研修とその組み立て (3/3)

[片山 繁載(日本マンパワー),ITmedia]
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人材イメージは“頼もしい専門人材”=ビジネス・プロフェッショナルを目指した取組み

 研修目的のひとつは、「自己の人材イメージ」作りだ。役職・肩書きが元の輝きを失ったとき、何がそれに変わりうるか。キャリア30年の人材を再度輝かせるために、どのような形でその人たちを“人財化”するかだ。ひとつの解決策の試みとして、「ビジネス・プロフェッショナル」の概念がある。

 仕事の本質は職務専門能力であり、その高低が本人の活用成否を大きく左右する。50代社員に共通するキャリア形成の考え方として、その企業なりの高度専門職を目指させる考え方だ。それは「この問題ならあの人に聞け」という“頼もしい専門人材”作りであり、その企業における問題解決のプロフェッショナルを育成することだ。そんな専門人材を育成できれば、もっと高度な人材活用も進み社内外に活躍の場所も多くなるだろう。

 欲しいのは、肩書きに頼らず、社内の問題解決や顧客の信頼を得る仕事ができる“頼もしい専門性を持ったビジネス・プロフェッショナル”だ。キャリア30年の経験の集大成として、目指す人材像=ビジネス・プロフェッショナルは有効なキャリア目標となる。単なる人材か、“期待の人財”かは、この専門力のレベルが分岐点となろう。キャリアデザイン研修で、目指す人材像として、「ビジネス・プロフェッショナル」を志向させる意味は大きい。

 ワークス研究所の大久保幸夫氏はこの概念について、企業の実情に応じ、仕事の職群分野ごとにビジネス・プロフェッショナルを定義づけ活用することを勧めている。企業には、経営・人事・総務・会計・資材購買・生産・営業・企画・販売・事務などの分野があるが、相応の分野でプロフェッショナルを認め、職種やその成果の求められ方に応じてビジネスリーダー、プロデューサー、エキスパートなどの職群タイプ区分をし、その専門レベルを向上してもらおうということだ(図表2参照)。

 社内プロフェッショナルを意識させるなら、人事制度として、「○○マイスター」制度のような、50代人材を意識した社内プロ人材の認定制度とリンクできればなおよい。しかし、現実的には社内外で有効活用できるプロの水準にも段階があり、同時に個人のプロとしての自覚、他者の評価が伴うことを考えれば、相応の準備時間が必要だ。できれば40代半ば位から、プロフェッショナル制度などを意識した働き方を啓発し、役職定年に備えておくことが望ましい。

図表2:ビジネス・プロフェッショナルのあり方の参考例【プロの3つのコース】資料出所:「キャリアデザイン入門(?)」大久保幸夫著、日経文庫2006年

内省を深化させてこそ、ホントに人が変わる!意識・行動変容を促す「対話」の重要性

 では、キャリアデザイン研修で人は本当に変わるのだろうか。50代社員のキャリアデザインは、ポジション変化など職業生活の変化に加え、さらに親の介護、子供の教育、住宅ローンなど個人生活の問題が人生設計に影響を与えているケースが多い。そのため、集合研修では、内省の視野と時間の奥行きが限られ、なかなか進まない。その鍵は「個別相談による対話」の促進にある。

 このため、研修と前後して、上司やキャリアカウンセラーとの面談を持つことが望ましい。研修と連動した対話を通じた「内省=深い気付き」があり、「ああ自分の本当の課題はこれか」という「自己課題」が見えたり、「自分らしくとはこういうことか」といった「自己一致感」が生まれる。

 この内省を深化させるのが、とりわけ上司やキャリアカウンセラーとの「対話」である(図表3参照)。対話は、ある事柄について、問題意識を持つ者同士の間にうまれる。普段はグレーゾーンの、日常の経験と反省が中心の対話だ。この対話は経験と反省のヨコの矢印関係に終始し、深い内省には至らない。深い気付きに至る対話は、他者を介した対話や自分との対話からタテの下向き矢印に作用するピンクゾーンの対話だ。上司やキャリアカウンセラーと本人がお互いのキャリアに関する期待や意図を語り合うところから、深い気付きが生まれるのだ。

図表3:深い気付きを得る内省と対話の構図

 キャリア支援全体を効果的に組み立てる上では、上司やキャリアカウンセラーなど、周りの存在は欠かせない。本人にどうして欲しいかを伝えるのは上司である。また、本人はどんな貢献をしたいかが問われる。キャリアの方向性をめぐる対話は、本人の今後のキャリア形成の岐路に立つだけに、お互いが真剣でなければならない。企業組織を、キャリアデザインが根付く風土にする上でこの対話は欠かせない。

 上司にはキャリアに関するアドバイザーや、コーチングのスキルを習得させておくことなども求められるところだ。

 またキャリアカウンセラーのような専門家を活用することも効果的だ。社員が自分のキャリアに関して上司や人事に話しづらいこともある。そのため中立的なキャリア開発のプロフェショナルとの対話を通じて、50代社員が自ら自分のキャリアを考え、将来展望を描けるよう支援するのである。キャリアデザイン研修と個別のカウンセリングを組合せて展開する企業も増えつつある。

 このように、50代社員のキャリア活用は、個人生活の変化を踏まえながら、現実的な組織や人事上の制約の中でキャリアの組み換えを行う必要がある。人それぞれに今後どんな働き方をするか、その課題に向き合う、「移行・調整」の時間と相応の解決支援が必要とされる。

 しかし、この支援はあと10年よりよく働いてもらうための「回収投資」であり、この後ろに控える30代・40代社員のための「よき先輩社員のモデル作り」の意味も持っていることを忘れてはならない。

 今回は、50代社員を輝かせるキャリアデザイン研修の全体的枠組みについて紹介したが、次回はより現場の人材課題に対処したキャリア支援のあり方について考えてみる。

著者プロフィール:片山 繁載(かたやましげとし)

1953年生まれ。大学卒業後、日本マンパワーに入社。教育事業部長、人材開発営業本部長を経て、その後再就職支援事業部門を立上げキャリアカウンセラー&人事・キャリアコンサルタントとして事業に従事。1997年以降、キャリア支援コンサルタント、キャリア・デザイン・プログラムの開発・インストラクター、キャリアカウンセリングなどを経験。現在教育研修&人材事業担当取締役。CDA(キャリア・ディベロップメント・アドバイザー)、メンタルヘルスマスター。


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