クライアントのニーズを把握して採用活動を始めると、今度は候補者としてアプローチした人達からクライアントに関するさまざまな噂話を耳にすることになります。中堅ソフトウェアA社の場合は
(1)「最近A社を辞めた人がノルマがすごく厳しくて大変って言ってた。」
(2)「A社は友達採用ばかりしてるんだって。」
(3)「A社は社長がコロコロ交代にすることで有名。」などなどの話が出てきました。
こういった話は、伝言ゲームのように元の話に尾ひれが付いて原形をとどめていないものもたくさんあります。また、尾ひれが大きければ大きい程、感染力が強くなるようです。
情報ソースは本人の承諾がない限り絶対明かしませんが、これらの話をクライアントに伝えることもヘッドハンターとしての付加価値であり、多くのケースで期待されていることです。クライアントが自社に関する噂話を把握することで採用の現場において適切な対応策が打てるのです。
さて、上記の(1)〜(3)の内容をA社の採用責任者に確認するとこのような回答が返ってきました。
(1)「ビジネスなのでもちろんノルマはありますが、毎年90%前後の人がノルマを達成します。昨年度は厳しい経済状況の中85%の人がノルマを達成しました。」
(2)「社員紹介制度はありますが、社員からの紹介、即採用ではなく、通常の採用プロセスを通ってもらいます。昨年度は約15%の中途採用が社員の紹介でした。」
(3)「現社長は就任して8年目になります。ただ、現社長が就任する前は10年間で5回社長が交代していました。」
このように前述の(1)〜(3)の話には事実(らしきもの)が含まれていますが、大きな尾ひれが付いていたり、古い情報に基づいたものだったようです。情報をくれた候補者に、A社に確認した内容を伝えると「えーそうなんだ、うちより全然いいじゃないですか」「確かに考えてみたら現社長はずいぶん長いですよね。人間古いことはよく覚えているもんだね」などのコメントとともに「変な話を広めずに済んだよ。確認してくれてありがとう」といわれました。
溢れる噂を鎮めるために事実は一定の効力を発揮しますが、事実の奥に隠れた、現場の当事者にしか語れない真実の声を聴きとる努力も怠らないようにしたいと思います。
岩本香織(いわもと かおり)
USの大学卒業後、アンダーセンコンサルティング(現:アクセンチュア)入社。東京事務所初の女性マネージャー。米国ならびにフィリピンでの駐在を含む8年間に、大手日系・外資系企業のビジネス/ITコンサルティングプロジェクトを担当。 1994年コーン・フェリー(KFI)入社、1998年外資系ソフトウェアベンダーを経て、1999年KFI復帰、テクノロジーチーム日本代表。2002年〜2006年テクノロジーチームAsia/Pacific代表兼務。2010年8月KFI退職。2010年9月より現職。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授