見え透いたウソをつく部下への対処法「お母さま、病弱なんですね」(2/2 ページ)

» 2011年09月26日 07時00分 公開
[鈴木麻紀,ITmedia]
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ウソをつかせない関係作り

 彼らがウソをつく理由は、(納得できないとしても)理解できました。ではそれを踏まえて、これから彼らにウソをつかせないようにするためには、どうしたらよいでしょうか?

 まず大切なことは、首ねっこを押さえないことです。彼らは、ウソがあなたにバレていることに、うすうす気が付いています。それでも、ウソをつくのをやめられないのです。そこに「そんなに体調が悪いのなら、病院に行って診断書をとってこい」「確か今週、あなたのお母さんは旅行に行くという話だったけれど、旅先まで看病に行ったのか?」などの事実を突き付けると、彼らの逃げ場がなくなってしまいます。逃げ場がなくなると、もっと大きなウソをついたり、その場からリアルに逃げてしまう(欠勤や退職)可能性がありますので、こらしめるつもりではないのなら、正論で追及するのは我慢しましょう。

 次に大切なのは、彼らが話しているときにウソだと思わないことです。信じるフリをするのではありません。本当に思わないことです。ポイントは、信じる対象は話の内容ではなく、いま本人がそう言っているという「事実」だということです。ときには、明きらかにつじつまがあわないメチャクチャな話もあるでしょう。でもそこには、ウソをついてでも和を保ちたいなどの何らかの気持ちがあるのです。その気持ちを尊重するのです。

 罪悪感にさいなまれながらウソをついてしまったとき、ウソをつかずにはいられなかった気持ちやそこに至る事情にあなたが注目してくれたことが分かったら、その人はもうあなたにウソをつく必要はなくなるのではないでしょうか。そうやってウソをつかずにすむ関係を作ること、そこから問題解決が始められるのだと思います。

ウソをつく原因

 問題を解決するために必要なのは、彼ら自身がウソの原因を知ることです。原因には2種類あります。「なぜ、対象を避けたかったのか」そして「なぜ、ウソをつくのか」です。

 彼らが避けたかった対象が特定の仕事(業務)だったとしましょう。仕事をやりたくないのは何故なのか。嫌なのは、仕事の内容なのか、仕事の進め方なのか、メンバーなのか。それはなぜなのか、どうなれば嫌ではなくなるのか……。具体的な状況を知ることは、問題の環境を変えるために有効です。

 問題を本質から解決するために必要なのは、「なぜ、ウソをつくのか」を彼ら自身に考えてもらうことです。辛く難しい作業ですが、本人のためを思うのならばいずれ必要です。

 これまで書いてきたように、彼らのウソは「周囲に迷惑をかけたくない」「誰も悪者にしたくない」といった気遣いから発生します。その気遣いの理由を、見つめてゆくのです。例えばあなたが丹念に聞きこんだ結果、彼らが「誰も悪者にしたくない」のは、実は彼ら自身が「誰にも嫌われたくない」からだったと分かったとします。そうしたらさらに、「なぜ人に嫌われたくないのか」「嫌わるとはどういう状態だと考えているのか」など深堀りしていきます。理由の奥の奥のそのまた奥を辿っていくと、その先に彼らの本心がぽっかり浮かんできます。「私は人に好かれたい」とか――。

 本心が見つかったら、次は、それを叶えるために何をすればよいのかを考えるフェーズです。これは楽しい作業ですね。

 ここまでのポイントは、あなたが回答を提示するのではなく、本人に考えてもらうことです。「なぜなぜ5回」などで、手伝ってみるのもよいでしょう。「この人はこう思っているに違いない」などの先入観を捨てて、彼らが自分の問題と向き合うのを支援してあげてください。

 簡単そうに書きましたが、問題のある人とここまで向き合うのは、容易ではないし、時間もかかります。実は私自身も「ウソをつかずにすむ関係を作る」ところまでしか、実際にはやったことはありません。この時は根本の問題解決にまでは至りませんでしたが、少しは彼らの気持ちを楽にできたのではないか、と自分で自分を納得させています。

 部下や同僚にウソを繰り返しつかれて困ったときは、罪を憎んで人を憎まずではありませんが、ウソを憎まずウソつきも憎まずの精神で、ウソの奥にある本当の問題と向き合ってみるとよいのではないかと思います。

著者プロフィール:鈴木麻紀

 鈴木麻紀

GCDF-Japan キャリアカウンセラー

ITサービス系人材ビジネス会社で、人事採用とキャリアカウンセリングに約6年間従事。2004年春、アットマーク・アイティ(現アイティメディア)入社。キャリア・転職関連のサービスの企画・運営、および記事の執筆などをおこなう。2008年4月にエンタープライズ編集部に異動、編集記者兼ブログの担当となる。

著書『ドジっ娘リーダー奮闘記


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