2008年当時は世界の主要経済国20カ国が初めて首脳会議を開き、世界経済成長を維持するために大規模な財政出動を行うことを申し合わせた。アメリカが約7800億ドル(当時の換算で約80兆円)、中国が4兆元(同約60兆円)などである。こうした財政支出で確かに世界経済は一定の回復を果たしたのだが、この財政支出のために各国の財政は悪化している。そして典型的にはアメリカに見られるように、景気はある程度回復しても雇用が増えない。企業が投資を抑えているために、雇用が増えない。
本来なら景気が回復して雇用が増え、そして税収が増えて、財政は再建へ歩み始めるはずだが、実際には世界経済は息切れしているような状況だ。2008年以来、世界経済を牽引してきた中国やインドもインフレ率が高くなっているために、金融を引き締め、成長率のスローダウンを図っている。全体的に見て、3年前のようにアジアの成長が世界経済を引っ張るというわけにはいかない。
ユーロ圏の危機に対して、アメリカは手を差し伸べることはできない。オバマ政権は連邦政府の債務上限を引き上げるのに精一杯で、とても他国を支援する体力はない。日本も何もできまい。世界最大の外貨準備を誇る中国ぐらいが唯一ユーロ支援、具体的には窮迫している国の国債を買う余裕がある。しかしEUが中国にとって第二の貿易相手であるとしても、ギリシャやポルトガル、アイルランドの国債を何の保証もなく買うことはできない。ドイツやフランスといった大国がそうした国債の保証をすれば別だろうが、ドイツやフランスにとってそれをするメリットはない。
とはいえ、IMF(国際通貨基金)が警告したように、いま世界経済は「危険水域」に入っている。イタリアやスペインに火がつかないうちに、何とか収めることができるのかどうか。世界は固唾を呑んで見守っている。
藤田正美(ふじた まさよし)
『ニューズウィーク日本版』元編集長。1948年東京生まれ。東京大学経済学部卒業後、『週刊東洋経済』の記者・編集者として14年間の経験を積む。85年に「よりグローバルな視点」を求めて『ニューズウィーク日本版』創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年同誌編集長。2001年〜2004年3月同誌編集主幹。インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテータとして出演。2004年4月からはフリーランスとして現在に至る。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授