チャールズ・J・ペレリン博士が提唱する組織のチームビルディング手法「4-Dシステム」。これがNASAでの多数のプロジェクトの基盤となっているのだ。
スペース・シャトルの打ち上げ、国際宇宙ステーションの運用、アポロ17号以来となる月面探査計画――。国家的プロジェクトチームのパフォーマンスを劇的に向上させ、NASA(アメリカ航空宇宙局)職員の約半数が実践しているというアセスメント「4-Dシステム」を開発したチャールズ・J・ペレリン氏は、天体物理学部門のディレクターを務め、このメソッドをフル活用することで数々のプロジェクトを成功に導いてきた。
1990年、NASA史上最大級の大規模無人観測器であるハッブル宇宙望遠鏡が欠陥を抱えたまま打ち上げられた。ペレリン氏がこの原因を追及していくと、技術的な問題ではなく人為的なコミュニケーション不足による無理解が引き起こしたことであることが明らかになった。ペレリン氏は、時として独り善がりな仕事をしがちな専門性の高い技術者たちをまとめていくために、彼らを変えるのではなく、一人ひとりの特性をつかみ、パフォーマンスを引き出す「コンテクスト」を創り出すことを考えた。
本アセスメントでは、意思決定の源になる「論理」「直感」「感情」「知覚」の4パターンをテストによって導き、その結果をもって「育成型」「受容型」「先見型」「統率型」という4種類のパーソナリティに分類する。例えば、クリエイティビティに溢れる先見型のリーダーに、秩序正しく堅実な方法を提案しても採用されにくい。逆に自分が先見型であれば、統率型の人間をサブリーダーに据えることで組織としてのチーム力は高まる。
個人だけではなく、チーム全体に対するアセスメントも同時に行われる。チーム力を高める8つの行動基準、「心からの感謝を示す」「利害関係があることを示す」「仲間を快く迎え入れる」「すべての合意事項を守る」「現状を踏まえて、プラス思考で考える」「最大限の努力を尽くす」「責任転嫁や不平不満を慎む」「RAA(役割、責任、権限)を明確にする」を定め、自分自身とチームのメンバー一人ひとりがどれだけこれを満たしているかを評価し合うのだ。さらに一度アセスメントの結果が出たら、定期的に再テストすることで、どれだけチームで改善できたかを再評価することが明確にうたわれている。
4-Dシステムは、実際にNASAにおいて500以上のプロジェクト、チームで採用され、成果が実証されている。理系に焦点を当てたチームビルディング法は耳にしたことはなかったが、本書は職人肌の技術者に即した異色のチームビルディングだといえよう。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授