コールセンターが変わるクラウドとソーシャルメディアの威力──ベルシステム24石黒不二代の「ビジネス革新のヒントをつかめ」(1/2 ページ)

30年の歴史で培った現場力と最新の情報技術は、チャレンジし続ける文化の中で新たなサービスを生み出し続けた。グローバルも視野に入れた今後の取り組みとは。

» 2012年02月24日 08時00分 公開
[石黒不二代(ネットイヤーグループ),ITmedia]

 コンタクトセンターやコールセンターと聞くと、どんなイメージを持ちますか? 保守的でなかなか苦労が多い業務というイメージを持っているとしたら、その認識はかなり古いです。確かに、インバウンドではユーザーの不平不満を受け付け、アウトバウンドでは興味のないお客様にも一から売り込むといった、大変な仕事であることに違いはありません。

ベルシステム24 山中洋平氏

 しかし、コンタクトセンターはマーケティングの世界では、大切な顧客接点のひとつであり、CRMの世界では、マーケティングプロセスの最終工程であり、リテンションの役割を期待されています。しかも、今年爆発の兆しを見せるソーシャルCRMは、このコンタクトセンターをさらに強力なマーケティングツールに変貌させていきます。

 今回は、9月で創業30周年を迎える日本最大級のコンタクトセンターの運営会社であるベルシステム24のCRM戦略部 新規事業局の山中洋平局長に話を聞きました。次々と繰り出されるマーケティング用語に少し押されぎみでしたが、大変貌を遂げるベルシステム24の次の一手を探ります。

現場力という強みをクラウドが推し進める

 ベルシステム24は、現在、全国に1万席、3万人のコミュニケーターを擁するコンタクトセンターを運営しています。もちろん、セールスをサポートするアウトバウンドやお客様の要望を受け付けるなどの対応がコア業務ではありますが、生活者の声を反映しているソーシャルメディアに着目し、ソーシャルを含めたCRMの提案に力を入れています。

 ベルシステム24が30年の歴史で培ったものは、現場力です。コンタクトセンター・アワード2011の最優秀ヘルプデスク/アウトソーシング部門賞を取った同社では、センターの現場で日々改善を実践しています。クオリティ ナンバー1そしてオンリー1を意味する「Q1」という改善のための活動があり、その表彰式のたびに山中さんは感動します。コミュニケーターは処理時間の改善をはじめ、自主的に日々改善に取り組んでおり、改善そのものが文化になっています。山中さんの言葉から、以前、メーカーで働いていたときの様子を思い出しました。工場ではQC活動が盛んで、表彰式には、涙を流さんばかりに喜んでいた現場の人たち。日本はそんな人たちに支えられ成長してきたのだと思い起こしました。

 コンタクトセンター業務には不満を持ったお客様からの連絡、また料金を納めていないお客様への督促などもありお客様に理解してもらう、怒られながらも工夫を必要とする業務もあります。それがベルシステム24の現場です。そして、そこには経験から積み上げたプロによる応対の仕組みが工夫されています。感情をモニタリングするツールがあり、それはワンセンテンスごとに感情のレベルを設定することができます。ある現場でこのツールを使用して対応したらお客様とのコミュニケーションがうまくいった。それではこれを全国に広めよう。こうして現場で培われた工夫が横展開するなどみんなが協力して強くなってきました。

 山中さんは、CRMが失敗するケースは目的と業務プロセスが不明確な場合に多い、と言います。例えば、ベルシステム24には、「チエノワ」という社内SNSがあります。知りたい人が尋ね、知っている人が答えるのです。必然性のあるものに必然性のあるシステムを入れることが大切です。

 また、同社を変革させているものにクラウドがあります。コンタクトセンターが旭川から沖縄まで全国にありますが、新たに在宅センターを始めました。クラウドでバーチャルなコンタクトセンターが実現し物理的な制限もなくなりました。現場で活用しているさまざまなツールの横展開も、クラウドで仕組みとして取り入れ全国に拡張しています。

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