「新しい時代は、そのときの人が考えて、その時代に合ったことをしないといけない。」井深さんの言葉がいまさらながら心に響く。
井深さんが発案し、盛田さんが土台を作り、大賀さんが完成したソニーのグローバリゼーションは、信長、秀吉、家康が成し遂げた天下統一に似ています。そこに明治維新を持ち込んだのは出井伸之さんです。第二創業ということで、それこそ21世紀の世界競争に勝てる会社を作ろうとしたわけです。
出井さんの構想は部分的に成功しました。現在の日本の大手電気会社で、ソニーほど世界競争に勝てる体制を持っている会社はないでしょう。体制はよいですが、実行面はどうでしょうか。出井さんの構想は、ソニーが発展していくためには日本が足を引っ張ってはいけない、ということに尽きます。
日本で、いままでのようにモノを作っていたのでは、必ず没落する。日本の大型電子産業は恐竜であり、隕石はすでに落ちたのだという、もう10年以上も前になる出井さんのこの予言ほど、今日の日本の電子産業の実態を表しているものはないでしょう。
恐竜は鳥に進化しなければ、生き残れない。鳥は恐竜より、体は小さいでしょうが、はるかに行動力があり、種類も数も多く、見た目も鳴き声も美しい。早く鳥になれば勝てる。
実際、アメリカの電子業界で生まれてきたのは、アップルであり、グーグルであり、フェイスブックのような空を飛ぶ鳥たちなのです。
ソニーは一日も早く、大型のテレビや、オーデイオ、デジカメなどはやめてしまうべきだったでしょう。もちろんそのプロセスの中で、徹底してファブレスにしながら改革を進めたらソフトランディングができたはずです。そうしながら、空を飛びまわるビジネスを生み出していけばよかったわけです。
知られているように、ソニーの強力な映画、音楽のビジネスは、すでに空を飛んでいるのです。エレクトロニクスの世界でも、地を這うものは大陸の新興国にまかせて、空を飛ぶビジネスに集中すべきでした。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授