「まだまだ未熟者ですが」――身内を謙遜して紹介するのは日本人の美徳のひとつ。でも、たまにはドーンと褒めて紹介してみてはいかがだろうか?
「ふつつかな娘ですが、末永くよろしくお願いします」と言うべきところを「ふとどきな娘ですが」と言ってしまったという笑い話を時々耳にする。内心で思っている以上に謙遜して家族を他者に紹介するのは、日本人というか、日本語の特徴だ。だから「愚息」だの「豚児」だのという言葉も豊富にあるのだろう。
しかし最近は「うちの妻は本当に素晴らしい」と堂々とおっしゃる方も現れて、日本もずいぶん変わったなあ、いいことだなあ、と思う。「謙遜の美徳」というけれど、「謙遜」もしすぎると不自然な感じがするわけで、今の時代、家族のことだって他者に対して遠慮なく褒めてもいいのではないだろうか。
では、仕事ではどうだろう? 今日は身内を他社(他者)に紹介するということについて考えてみたい。
ずいぶん前の話だが、クライアントのマネジャーから部下を紹介された。そのとき彼は、私にこう説明した。
「僕と一緒にこのプロジェクトを推進している山田(仮名)です。彼女は、僕がスカウトしてこの部署に異動してもらったんですよ。どうしても欲しい! と言って。今後、山田が中心となって進めていくことになりますので、よろしくお願いします」
山田さんはひたすら恐縮し、「いえいえ、私はまだ勉強中でして……」と身の置き所に困ったかのようにもじもじしていたが、実際マネジャーが「スカウトして」と言った言葉通りの人物で、マネジャーから彼女中心になった現在もプロジェクトはうまく回っている。私も「本当に優秀な人だなあ」と日々感じ、一緒に仕事することを楽しんでいる。
私はこの経験から、身内を他者に紹介する際に「褒める」のはいいものだなあ、と思うようになった。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授