動かぬ彼を動かすには人生はサーフィンのように(1/3 ページ)

自ら立ちあげたプロジェクトなのに、まったくやるべきことをやろうとしない同僚。彼はなぜ、行動しないのでしょうか?

» 2012年09月14日 17時00分 公開
[竹内義晴(特定非営利活動法人しごとのみらい),ITmedia]

 先日、知人から相談を受けました。

 知人の職場で田中さん(仮名)の元、新しいプロジェクトが発足したそうです。それは田中さん自身が「やりたい」と企画し、上司に提案したプロジェクトなのですが、田中さんは「できること」や「やりたいこと」だけやって、「やらなければならないこと」には手を付けようとしないのだそうです。詳細な資料は作るけれど、それをどこにも見せずに延々と手直しだけ続けているような状態なのだとか。

 他のメンバーは「プロジェクトオーナーの田中さんが動き出すまで放っておこう」と動かないし、田中さんは「誰も動いてくれない」とぼやく。結果、プロジェクトは進まない。

 それに業をにやした知人はプロジェクトを前に進めようと、田中さんがやろうとしない「やらなければならないこと」を半ば仕方なく始めるのですが、ふとわれに返ると、「そもそも田中さんが言い出したプロジェクトなのに、なぜ私がプロジェクトの進ちょくに気をもみ、尻をぬぐうように動かなければならないのだろう」と、理不尽さに気付くのだそうです。

 「私、田中さんに振り回されているような気がして仕方がないんです。田中さんはなぜ、できることしかせず、やるべきことをしないのでしょうか? 私に何か問題があるのでしょうか? もし田中さんにやるべきことをやってもらう方法があるとしたら、それはどんな方法なのでしょうか?」

 直接責任を負うべきではない仕事を成果につなげようと一生懸命頑張っている。なのに報われないと、残念な気持ちになりますね。そこで今回は、「やらなければならないこと」を行動につなげる方法について、個人と組織の観点でお話しします。

行動と「やりたいレベル」

 「やりたい」と一言で言っても、その中にはいろいろな「やりたいレベル」があります。なんとなく「やりたい」と思っていることと、使命感に燃えた「やりたい」では、行動に差が出るのは当然です。

 私もそうです。仕事のタスクをこなすために手帳にTODOリストを作っているのですが、楽しいことや今すぐにでもできることは比較的早く行動する一方、いつまでたってもリストから消えないTODOもいくつかあります。リストにいつまでも残っているのは、「やりたい」と思うレベルが低いか、「やらなければならないこと」のどちらかです。

行動を生む「ある一線」

 心理学用語に「閾値(いきち)」という言葉があります。日常の言葉では「しきい値」と言った方がなじみ深いかもしれません。

 閾値とは、「○○しない状態」から「○○する状態」にスイッチが切り替わるために必要な何かしらの値のことです。私たちは閾値を境に「行動するか/しないか」を無意識に天秤にかけ、行動を決めています。

 例えば、ダイエットがそうです。生死に関わるレベルなら「今すぐやらなきゃ」となるし、おしゃれな服を着たいぐらいなら「明日からでもいいか」になるでしょう。閾値と、自分の中にある「やりたいレベル」のギャップが大きいほど、「面倒だから」「大変だから」の方に引っ張られてしまいます。

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