キャリア満足度が高い人共通項はつねに仕事や会社に対して、受け身の姿勢ではなく、前向きに、能動的な態度で臨んでいること。「慣れ」に身を任せてはいけない。
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ビジネス書の著者たちによる連載コーナー「ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術」のバックナンバーへ。
アップル、ユニデンでは人事部門長として、そして、独立後はベンチャー企業の人事担当の社外取締役という立場で新卒から社長のポジションまで、1000人以上の多様な人を面接してきた。
また、講師として、これまでに企業向けのリーダーシップ研修やキャリア自律研修を1万人以上に行なってきた。その過程で、30代を分岐点に、これでもかというほどキャリアの明暗が分かれていく人たちを数多く目の当たりにしてきた。
30代という時期をどう捉え、どう過ごすかで、今後のビジネスパーソン人生が、ほぼ9割方決まる。
それが、現在のわたしの偽らざる実感だ。
気力も体力も十二分にある30代は、初めてのことにチャレンジし、大きすぎると感じる責任を負うことに、十分な耐性も持ち合わせている。40代、50代になってから、まったくそれまでやったことがないことを始めるのはなかなかしんどくなる。
30代にできてしまった差を40代で取り戻すことは非常に難しい。30代ではまだ早い、などということはビジネスにおいては何ひとつない。足りないのは年齢ではなく、経験だ。だから、「やる」ことがなにより必要なのだ。なぜ、「やる」チャレンジをした方がよいか? それは、チャンスが生まれるからだ。「やる」ことのまず第一歩は、「必要なスキルを学べる(ということが分かる)仕事を受け入れること」だ。
自分が身に付けたいと思うスキルが得られるような仕事をすることだ。この順番を逆だと思っている人が、残念ながらほとんどだ。逆とは、スキルが十分に身に付いてからでないと、仕事ができないと思っている、ということだ。
しかし、例えば部長に必要なスキルは、部長にならないと学べない、社長に必要なスキルは社長にならない限り決して学べないのだ。
だから、もしそれらを学べそうだと思う機会が得られるのであれば、手を挙げてでも志願したほうがよい。大企業では、主流の仕事に携わっている場合、上の役職者も揃い、優秀な先輩もいて、自分に出番が回ってこないのは分かっている。
それでも、わたしが知る限り、自他共に会社の中心として働き、主体的に自分のキャリアを切り開き、満足している人、すなわち、キャリア満足度の高い人は遅くとも30代までに自ら志願して新規事業や傍流のビジネスを敢えて選んでいる。
なぜなら、そこは人材が足りないから、自身がマルチタスクで動かなければならない、他部署では上司がやるような仕事を自身が任されることも多い。そこで、活躍し頭角を現すのだ。そして、その後主流となるビジネスに引っ張られ会社を支えていくのだ。
以前に自らキャリアを切り開き、キャリア満足度の高い人に共通のコンピタンシーを抽出した。その際に、さまざまな企業の次世代を担うエースと言われている人間を人事部門から紹介してもらい、50人ほどインタビューした。そのほとんどが30代だ。
その結果、1社で勤め上げながら、キャリア満足度が高い人の共通項として以下の3つがあった。
(1)彼らの考えが理解できない上司がいても、正面からぶつかることを避け、上手く対処している。また、社内の制度などがなくても自らが望んでいる働き方や、職場を得ることができる。
(2)自らの興味・関心の延長上にある事業ビジョンをもち、それを会社のビジョンと重ね合わせようとする。接点がなければ周囲を説得し、無理矢理にでも接点を作る。
(3)本流ではなく、新規事業や、人がやりたがらない傍流のビジネスで活躍し、頭角を現し、その結果全社的に認められる存在になる
キャリア満足度が高い人の3つの共通項を見てみると、つねに仕事や会社に対して、受け身の姿勢ではなく、前向きに、能動的な態度で臨んでいることが分かるはずだ。
つまり、キャリア満足度が上がるか否かは、慣れが出てきた30代になったとき、その時期を新しいことを始めるべきサインだと考え、慣れに身を任せない。そんな人がその後活躍できるのだ。
例えば、社内で組織横断的なプロジェクトやタスクフォースに参加する。新規事業の担当者を公募していたら手を上げる。人がやりたがらない、傍流ビジネスの再編に敢えて携わる。どんなことでもいい。とにかく、「慣れ」に身を任せないことだ。
この最も成長できる時期をやり過ごしてしまってはもったいないのだ。多くの人は30代になるとすっかり落ち着いてしまう。体力も落ちて、体型も崩れたり、太って腹が出てきたりして、もう昔のようにはいかない、などと考え出す。しかし、まだまだ落ち着いたり老け込んだりしてはいけない。つまり、まだ子どものように、どんどん吸収して成長していく時期だということなのだ。
30代は、多少の無茶をやって失敗しても、まだ「若気の至り」で許されるのだ。いままでやったこともない初めての仕事、ハードルが非常に高いと思うような役割、自分自身で仕事をするのではなくチームとして成果を上げる、これらにチャレンジして、転びまくる、それができる最後の年代ということだ。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授