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» 2014年08月19日 08時00分 公開

「等身大のCIO」ガートナー重富俊二の企業訪問記:ITリーダーは「なさざる罪を恥じよ」を肝に銘じる (2/2)

[聞き手:重富俊二(ガートナー ジャパン)、文:山下竜大,ITmedia]
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世界で戦える強い業界の実現が急務

 ――ユーザーとITベンダーの関係について思うことは。

 2004年ごろ、一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)で、ユーザーとITベンダーの要件定義、システム構築、テストにおける関係をまとめたレポートを作成した。まず要件定義ではユーザーが主導権を握るが、技術面ではITベンダーが主導権を握る。

DICの小田氏(左)、ガートナーの重富氏(右)

 次にシステム構築では、ITベンダーが主導権を握るが、ユーザーはリスク管理になる。ITベンダーが保守・運用を考えているときに、ユーザーは現場利用を考える。つまり、考え方がまったく違うのである。

 この間の橋渡しがどれだけたいへんなことかをユーザー、ITベンダーそれぞれに理解しなければならない。このときITベンダーが解決策を持っているかどうかが重要。ユーザーとITベンダーは、ビジネスではなくパートナーシップでなければ成功は得られない。

 メインフレームの時代には、好むと好まざるとに関わらずパートナーシップの関係だったのでうまくいっていた。しかしオープンシステムになったことにより、責任の範囲があいまいになり、ビジネスの関係に変化している。

 ITベンダーが失敗を勉強だと思えればよいのだが、ユーザーと距離をおいてしまった。そのためユーザーとITベンダーの間に大きな距離ができているのが現状だ。個人的には、いまのITベンダーは味方ではないと思っている。

 この状況を打破するために、日本のIT業界は、人材育成、人材の流動化について真剣に考えるときである。世界で戦える強い業界にすることが急務といえる。

 ――人材の流動化について、もう少し詳しくうかがいたい。

 教育やITベンダーとの交流の幅をもう少し広げることが必要である。日本では転職に良いイメージがないので、それよりは組織に属したまま会社間などで人材を適材適所に配置することのほうが取り入れやすい。ビジネス戦略は企業の中で考え、ITシステムに関しては人材を企業の壁を越えて流動的に活用する。これにより無駄がなくなり、戦略的な投資が可能になるのではないだろうか。

自ら創造的な仕事をするように心がける

 ――最後にITリーダーにメッセージをいただきたい。

 ユーザー企業のIT担当者は、システムの安定稼働を強いられる一方で、常にビジネス側の業務要求を聞き出して、システムを拡張していかなければならない。しかし、ビジネス側は事実しか話すことができないので、だれも真実を知らないシステムができあがってしまう。

 IT担当者は、ビジネス側から言われた事実を鵜呑みにして、システムを構築すると使われないシステムになってしまう。そこでIT担当者には、要求工学に基づいた論理的な思考も要求される。言いたいことは、大きく2つ。1つは「大胆にして細心」であり、もう1つは「工学的アプローチ」である。

 より早く仕事をしたいと考えるのであれば、80%程度でスタートし、自ら創造的な仕事をするように心がけた方がよい。一方、人より仕事が遅いのであれば、すぐに行動しなければならない。「巧遅は拙速に如かず」という言葉があるが、拙速とは、80%の段階でスタートし、動きながら完璧にすることと理解している。出来が悪いのを正当化する言葉ではない。もっとも悪いのは、何もしないことだ。ITリーダーは、「なさざる罪を恥じよ」を肝に銘じてほしい。

対談を終えて

小田氏と最初にお会いしたのはもう随分以前のことになる。それ以降もいろいろな場面でお会いすることになるのだが、いつも氏の周りでは議論の花が咲いていた。理論家というだけでなく、その話題の豊富さがその理由だろうと私は思っていた。

その小田氏がIT部門から離れるということを聞きつけ、急遽お願いして今回のインタビューが実現した。インタビューは自然とこれからITを担っていくであろう人へのメッセージが話題の中心になった。「なさざる罪を恥じよ」。別にITに限ったことではない。人として肝に銘じたい。

プロフィール

重富 俊二 (Shunji Shigetomi)

ガートナー ジャパン エグゼクティブ プログラム バイス プレジデント エグゼクティブ パートナー

2011年 12月ガートナー ジャパン入社。CIO、IT責任者向けメンバーシップ事業「エグゼクティブ プログラム(EXP)」の統括責任者を務める。EXPでは、CIOがより効果的に情報システム部門を統率し、戦略的にITを活用するための情報提供、アドバイスやCIO同士での交流の場を提供している。

ガートナー ジャパン入社以前は、1978年 藤沢薬品工業入社。同社にて、経理部、経営企画部等を経て、2003年にIT企画部長。2005年アステラス製薬発足時にはシステム統合を統括し、情報システム本部・企画部長。2007年 組織改変により社長直轄組織であるコーポレートIT部長に就任した。

早稲田大学工学修士(経営工学)卒業


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