連載
» 2014年11月25日 08時00分 公開

視点:水素エネルギーの利用拡大を目指して (3/4)

[遠山 浩二(ローランド・ベルガー),ITmedia]
Roland Berger

経済合理性を成立させる事例

 水素エネルギーが持続的な社会インフラとしてあり続けるためには、関係するステークホルダー全員にとって経済合理性が成立することが不可欠なのは前述のとおりである。

水素を利活用する社会実現の成立要件

 燃料電池車や燃料電池を利用しモビリティやエネルギーを活用する企業や消費者等の利用者、燃料電池車を提供する自動車メーカーや水素ステーション等のインフラを提供するインフラ事業者等の事業者、そして水素インフラの普及に社会的意義を見出す(そのために補助金等のサポートを行う)地方・中央政府、これら全ての関係者にとって、合理性が成り立たなければならない。(図B参照)

 関係者にとって、それぞれの合理性を担保しながら、事業全体のモデルを成立させようとしている取組みとして、フランスポストの事例がある。フランスポストは、2014

年から燃料電池レンジエクステンダーを追加した電気自動車を、地域限定で郵便配達サービスに採用している。もともとは電気自動車を使用していたが、航続距離を100km程度に限定し、500万円程度と比較的廉価の車両コストで調達できる燃料電池レンジエクステンダーを採用した。

 冬は燃料電池の熱を暖房として使用でき電気自動車での効率低下の課題を避けられるというメリットもある。利用者であるフランスポストにとっては上記のEVの技術課題を克服しつつレンジエクステンダーとして水素を活用することで廉価な車両を活用して合理性を担保。インフラ側については、太陽光発電を活用した小型の水素製造装置・水素ステーションでコストを抑えつつ、必ず自社の車両が1日1回の水素充填利用することで稼動を確保する。フランス政府は自国水素産業の育成、地方は知名度向上の目的を持って合理的な範囲での支援を行っている。(図C参照)

フランスポストの取り組み

 国内でも興味深い取組みがある。北海道の苫前町におけるグリーン水素プロジェクトである。既設風力発電機を活用した事業モデルを構築し、風力発電によるグリーン水素事業全般をインキュベートしようとする取組みである。ここでは、既設の風力発電機で発電した電力で電気分解により水素を製造。その水素を、ボイラーの燃料、漁船の燃料として活用し地域へのエネルギーに還元し燃料電池車への水素供給も視野に入れている。純国産エネルギーの地産地消モデルとして、既存風力発電機を用いることで初期投資の削減しつつ、再生可能エネルギー資源を地域内で活用することで資金の地域外流出を防ぐとともに地域の雇用創出、活性化というベネフィットを狙う。

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