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» 2015年05月11日 08時00分 公開

デジタル時代におけるCIOの役割とは何か?Gartner Column(2/2 ページ)

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デジタルの「脅威」と「チャンス」を知らせる責任がCIOにある

 実は、私たちも、ITやデジタルテクノロジを経営トップやビジネスのトップが理解できているとは思っていない。では、知らないままでよいのかというと、先に挙げた書店やフイルム会社のようになるのを防ぐために、更に前向きに、変化に対応して、今も絶好調のフイルム会社のようになるために「知るべき」「理解すべき」だと考えている。

 しかし、経営トップや、ビジネスのトップラインは、顧客のことや、新製品のことや、株主のことなど、目先の考えなければならないことが山盛り過ぎて、デジタルテクノロジについて、情報収集をしたり考えたりする時間がない。今までも、それを理由にITを優先事項にはしてくれなかったはずだ。そんな彼らに、正しい危機感を持ってもらうために訴えるのがCIOの仕事ではないだろうか。

 先に「ITを理解してくれない」と愚痴をこぼすCIOが存在することを記したが、そのような場合には、ITの存在価値を、ビジネスの言葉で説明するように勧めている。では、デジタルではどうなるのか。デジタルの場合は、正しい危機感を持ってもらえるように訴え、そして、ビジネス戦略にそれらを書き記してもらえるように影響させなければならない。今までのITとデジタルテクノロジとの違いは、導入が遅れたり、他業種の参入を許したりすると、取り返しがつかないことになる可能性が高いのだ。

 ガートナー リサーチ部門でフェローを務めるデーブ・アロンは、「(デジタルテクノロジに対して)何もしないことにより、企業活動を危険な状態にさらしてしまうリスクが時々刻々と高まっている」と話すが、この真意をどうか理解してほしい。

CIOは、自分の言葉で「正しい危機感」を語るため自ら情報収集活動をすべき

 セミナーや研修と言えば、自らをすごろくでいえば「あがり」の位置にあると思っているCIOには、関係ないと考えられがちだ。配下の者が、自社に関係のある情報をCIOに持って行けば、それで十分に事足りていると考えられがちではないだろうか。本当にそうだろうか。自身の肌感覚で、時代の変化を感じてほしい。

 アメリカで自動車会社が集まる都市と言えば、デトロイトだ。このことに、積極的に文句を言う人はいない。しかし、かのテスラモーターは、シリコンバレーに会社がある。シリコンバレーといえば、IT業界では知らぬ人がいないITの産業集積地だ。そこにテスラモーターがある意味を、現地に出向いて、肌感覚で理解できている自動車に携わる企業のCIOが何人いるだろうか。

 シリコンバレーのすぐ近隣であるサンフランシスコには、デジタルテクノロジやそれらのテクノロジを駆使して新たなビジネスを始めようとする若者たちが、オフィスを構える街として変貌しようとしている。シリコンバレーにオフィスのあるIT企業に勤める若者の多くがサンフランシスコに居を構えているという実態を目で見て感じるべきではないだろうか。ITの、いや、いまとなってはデジタルテクノロジの産業集積地に足を踏み入れてみれば、日本では感じることのできない「風」を肌身で感じられることだろう。

いまこそ行動するCIOになろう

 行動するCIOといえば、火を吹いているプロジェクトに付きっきりになったり、支出を削減するために、自らがベンダー交渉に出向いたりするイメージがあった。しかし、前出のように、CIOの行動パターンは大きく変わる。名CIOは、予算削減が上手なのではなく、デジタル世界における自社ビジネスの成長を描けることが第一条件になる。そのために行動と意思決定をするのがCIOの役割となるのである。

著者プロフィール:小西一有 ガートナー エグゼクティブ プログラム (EXP)エグゼクティブ パートナー

小西一有

2006年にガートナー ジャパン入社。CIO向けのメンバーシップ事業「エグゼクティブ・プログラム(EXP)」において企業のCIO向けアドバイザーを務め、EXPメンバーに向けて幅広い知見・洞察を提供している。近年は、CIO/ITエグゼクティブへの経営トップからの期待がビジネス成長そのものに向けられるなか、イノベーション領域のリサーチを中心に海外の情報を日本に配信するだけでなく、日本の情報をグローバルのCIOに向けて発信している。


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