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» 2016年12月21日 07時21分 公開

IT活用で最大限の「おもてなし」――そのためにはシステム部門は良きユーザー部門であれ「等身大のCIO」ガートナー重富俊二の企業訪問記(2/3 ページ)

[聞き手:重富俊二(ガートナー ジャパン)、文:山下竜大,ITmedia]

おもてなしの心で新しいビジネスモデルに対抗

――徹底的な合理化、効率化とは別に、日本の「おもてなしの心」を実現することは、ある意味両極端だと思う。IT化で対応する部分と、人が対応する部分は、意識して区別しているのか。

藤田観光 藁科氏(左)、ガートナー 重富氏

 バックヤードで書類を作ったり、各所に連絡をしたりという時間をなるべく少なくし、お客様に接する時間を多くすることが重要になる。IT化により、効率的に仕事をすることで、生産性を向上し、お客様に最大限の「おもてなし」を提供する時間を増やすことに取り組んでいる。

――システム面では、顧客情報を取り扱うが、名前や住所などの基本情報だけでなく、食べ物の趣味や嗜好、ルームサービスかレストランかなど、さまざまな情報がある。こうした情報は宝の山だが、分析などシステム化されているのか。

 情報を入力する仕組みは構築しているが、情報活用ではビジネス系のホテルとラグジュアリー系のホテルで違ってくる。例えばホテル椿山荘東京などのラグジュアリー系のホテルでは、朝、昼、晩で何を食べたのか、どちら向きの部屋が好みなのか、禁煙か喫煙かなども含め、宿泊ごとに顧客情報を収集・活用している。

 一方、ワシントンホテル、ホテルグレイスリーのビジネス系では、藤田グループメンバーズカード(FGMC)を使って、チェックインの時間をなるべく短くする工夫もしている。スマートチェックインシステムと呼ばれるこの仕組みは、他のホテルに先駆けて導入したものである。

 また海外からのお客様が増えているので、ビジネス系のホテルにも、コンシェルジュを置いている。ビジネス系のホテルにコンシェルジュを置くところはそれほど多くない。こうした取り組みにより、お客様満足度の向上を目指している。

――ちょっと視点が変わるが、Airbnbのような新しいビジネスモデルは、藤田観光にとって脅威なのか。

 現在、来年の通常国会に向け、営業日数に上限を設けたうえで民泊が認可される方向で国の協議が進められている。今後さらに規制緩和される可能性もあるが、藤田観光では地域の商業施設と密着したサービス提供に取り組んできた実績もあり、宿泊施設を安価に提供するビジネスモデルが簡単に脅威になることはないと思っている。

 その一方で、リゾート事業の一環として、2017年4月に「箱根小涌園 天悠(てんゆう)」を開業する予定だ。天悠は、1室が約30平米の広めの部屋で、各部屋に露天風呂がついている。少人数で、部屋や温泉、料理を楽しんでもらうことをコンセプトにしている。

研修で毎日10キロ走っていた新人時代

――これまでのキャリアについてうかがいたい。

 社会人としては、財務経理を最も長く担当しているが、システムにも関わってきた。最初の会社である医療機器メーカーでは、ERPが登場する前の1986年〜87年に、初めて会計システム構築プロジェクトに参加した。次に非鉄金属DOWAホールディングスに転職し、ERPの導入や2000年問題を経験し、その後、藤田観光に移籍してシステムは約2年担当している

――新人時代に、研修で毎日10キロ走っていたと聞いたが。

 本当に鍛えられた。就職氷河期でもなく、普通に就職したのだが、技術系、事務系、営業系も含め約300名が富士山のふもとの研修センターに集まって、1〜2週間の座学を行った。その間、毎朝10キロ程度走らされた。その順位も記録されるのだが、順位が上だったので本社採用になったと思っている(笑)。

 本社で経理部門に配属された。当時の経理業務は伝票の手書き集計が残っている時代で、決算締めでは残業続きでした。会計システムの開発では業務の定型化、運用の見直しに力を入れました。

 当時会計業務の80%程度は定型化されており、残り20%が例外処理。この例外処理をシステム化しようとすると、仕様が複雑になりすぎてシステム構築が困難になる。そこで運用の見直し、95%の業務を定型化し、残りの5%をシステムから切り離した。夜中まで仕事をしていた経理担当者を残業から開放できることを会計システム構築から学んだ。

――時間の使い方を大切にすることへのこだわりが生まれたと聞いたが。

 残業続きの毎日を送っていた時、職場の先輩から「引き継いだ作業は、前任者がかけた時間を5分でも、10分でも早く終わらせること。そうしないと、考える時間を作ることができない」と教えられた。作業時間を短縮できれば、考える時間を作ることができ、考える時間ができると改善ができる。ホテル業界であれば、おもてなしの時間を増やすことができる。この教えは、いまも仕事に生きている。

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