また、誰もがストレスに強いわけではありません。コミュニケーションが活発に行われ、お互いを気に掛け合えるような職場。こうした職場であれば、いつでも相談したり、意見を言ったりすることができ、一人で悩みを抱え込むようなことも起きにくくなります。
Googleが実施した調査では、「心理的安全性」といわれる本来の自分でいられることが仕事の生産性に大きく関与しているという結果が出ており、上記に挙げた3つの「所属感」「戦力感」「一人で抱え込まずに相談できる」というものは、メンバーのメンタルを守るだけでなく、生産性にも大きく関与するでしょう。
メンタルヘルス不調者を出さない職場づくりを進めるうえで、上司が気を付けるべきポイントを3つにまとめました。
(1)自分の考えをメンバーに率直に伝え、それぞれが安心して話せる環境をつくる
人はそれぞれ考え方が違います。業務指示だけではなく、メンタルヘルスに関することも含めた、上司自身の考えを自部署のメンバーへ意識的に伝えること。そうすることで、メンバーの反応を知ることができ、お互いに考えを共有し合うこともできます。そこから信頼関係や人間関係も深まっていきます。
(2)アドバイスではなく「聴く」
メンバーから相談されると、ついすぐに意見やアドバイスをしたくなるもの。ただ、まずは「聴く」ということを意識しましょう。大切なのは、何が問題になっているのか、という根本を理解することです。
例えば、「業務量を減らしてほしい」という相談があった場合。よくよく話を聞いてみると、業務量が多くなっている根本の問題は、「上司が忙しいため担当業務について相談できず、手が止まっていること」かもしれません。その場合、業務量を減らしたとしても根本の問題は解決できず、「定期的に相談の機会を設ける」「相談窓口を別に設ける」といった対策のほうが有効でしょう。
(3)目標達成だけでなく、部下の仕事の全体量や任せ方に気を配る
能力や業務の習熟度が均一なメンバーを抱えるマネジャーは少ないでしょう。業績を意識することはもちろん大切ですが、部下が能力を発揮できる仕事の任せ方になっているか、量は適切か、マネジメントの際に意識してみましょう。
このような職場づくりを行う上で最も注意すべきことは、取り組むこと自体が負担になってしまわないように工夫し、継続することです。そのため、以下を意識するとよいでしょう。
一気に取り組みを始めてしまうと、手がまわらなくなり、中途半端になりがちです。「相談の機会を増やす」といった場合も、毎日ではなく週に1回にするなど、無理のない範囲からスタートすることが大切です。
忙しくてすぐに相談に乗れない場合は、「○分後なら大丈夫だよ」「メールを送ってもらえたら返信するよ」「都合がついたら声かけるよ」といった提示をしましょう。そうすることで、自身の都合に合わせて相談にも乗れ、また部下にとっても安心して相談してもらえるようになります。
残念なことに、これだけ気を付けてもメンタルヘルス不調者が発生してしまうこともあります。その時は早めに専門医への受診を勧めてください。早い段階で対処することによって、早期に回復できることもあります。もし判断に迷うようでしたら、社内の産業医や保健師、またはEAP(Employee Assistance Program)などの専門家へ相談してもよいでしょう。上司が1人で全てを解決することは難しいもの。人事と連携し、対応することが必要です。
これまで見てきたように、メンタルヘルス不調者を出さないための職場づくりは、裏を返すと誰もが働きやすく生産性の高い職場づくりとも言えます。育児や介護をする人、障害者など、さまざまな人の多様性を認め、誰もが「働きやすい」「働きがいがある」と思える職場をつくることが、これからの企業にとって優秀な人材を確保していくためにも重要な施策になっていくのではないでしょうか。
立教大学 社会学部卒業。メーカー営業職、CS部門を経て2004年にゼネラルパートナーズ入社。障がい者採用コンサルタント、キャリアカウンセラー、人事部門等を経験後、2012年に精神障がいの方専門となる就労移行支援事業所シゴトライ台東の立ち上げに携わる。現在はシゴトライ台東施設長として勤務。
資格:米国CCE,Inc.認定GCDF-Japan キャリアカウンセラー。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上
早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授