1つの大きなストレス要因がきっかけの場合もあるが、多くはさまざまなストレス要因が絡み合ってメンタルダウンにつながっている。
就労移行支援事業所シゴトライ施設長の南雲です。前回は「復職した社員が配属された場合、どのように接すればよいか?」について取り上げました。
労働安全衛生法の改正により、2015年からストレスチェックを行うことが義務化されたことで、メンタルヘルスに取り組んでいる企業は2011年度(平成23年度)では47.2%でしたが、2015年度(平成27年度)には59.7%にまで増加しました(厚生労働省 平成23年度・平成27年度「労働安全衛生調査」より)。このような取り組みを行う企業が増える一方で、精神科へ通院している人は年間200万人(厚生労働省 平成26年度「患者調査」より)もいるという実態があります。
そこで今回は「メンタルヘルス不調者を出さない職場づくり」について考えていきます。
メンタルヘルス不調者が出やすい職場の特徴を考える上で、重要なことがストレス要因です。1つの大きなストレス要因がきっかけでメンタルダウンになる人もいますが、多くの場合は、さまざまなストレス要因が絡み合ってメンタルダウンにつながっているように思います。
例えば、残業時間が多い忙しい職場の場合、心身の疲労がたまりやすく、気持ちにも余裕がなくなります。すると、イライラが募り、コミュニケーションにおいても相手を思いやった言動がとれなくなります。
また、業務効率も下がり、仕事の成果にも影響が出てきてしまいます。このように、他者への配慮ができなくなることで人間関係に影響が生じたり、仕事で成果を出せないことで評価が悪くなったりします。その結果、さらにイライラが募るといった悪循環に陥ってしまい、メンタルダウンにつながってしまうのです。
こうした職場でのストレス要因は、主に3種類に分けられます。
(1)就業時間、残業時間、休暇といった「就労体系」に関するもの
(2)上司、同僚、部下との関係性といった「人間関係」に関するもの
(3)自身の待遇や将来のキャリアビジョンといった「評価」に関するもの
これらに、業務内容の相性や裁量権、家庭環境やプライベートでのストレス要因(悪い出来事ばかりではなく、結婚や子供の誕生、昇格といった良い出来事においてもストレスは生じる)も組み合わさり、複雑に重なっているのです。
そして、もう1つ考慮しなければならないのが、個人の考え方の傾向です。特にメンタルヘルス不調者の中には、うつ病を発症してしまう人が多いといわれています。
うつ病の方の特徴として、以下のような傾向が見られます。
こうした状態で、役職が上がるなど求められるものが増えてしまったり、周囲からサポートを求められ自分の限界以上に仕事を引き受けてしまったりすることで、メンタルダウンにつながる場合が多くあります。
そして、このように本人が自身の状態に気が付けない職場では、メンタルヘルス不調者が多くなる傾向があるようです。また、意見を言っても聞いてもらえないような孤独な環境も、メンタルヘルス不調者を出してしまう職場の特徴といえます。
逆にメンタルダウンしにくい職場環境の特徴を見ていきましょう。経験から言えば、以下の3つが挙げられるように思います。
マズローの欲求5段階説は、多くの方が知っているでしょう。人間の欲求は5段階のピラミッドのように構成されており、低階層の欲求が満たされると、より高次の階層の欲求を求めるとされています。
<第一階層>生理的欲求 ・・・衣食住など本能的な欲求
<第二階層>安全欲求 ・・・危険を回避したいという欲求
<第三階層>社会的欲求 ・・・集団に所属し仲間が欲しいという欲求
<第四階層>尊厳欲求 ・・・他者から認められたいという欲求
<第五階層>自己実現欲求・・・自分らしく生きたいという欲求
この中で、所属感は「社会的欲求」、戦力感は「尊厳欲求」に該当するものだと思います。こうした欲求を満たせる職場では、ストレス要因をプラスに変換させ、モチベーションの原動力にしていくこともできます。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授