相手をリーダーだと認めて接しているだろうか? リーダーとして扱われていなければ、リーダーとして行動するはずはない。
この連載は、「指示待ち人間を作るリーダー、5つのタイプ」を全5回にわたってお届けします。今回は4回目です。
チームを持つマネジャーであるかどうかにかかわらず、自分の担当領域においては誰もがリーダーでなければならない。「タイプ3 むやみに褒めるリーダー」で問題を提起した。
一人一人がリーダーの自覚を持ち、指示待ち人間を作らないリーダーシップを目指せたら、組織としての成長も目覚ましいだろう。ところが、リーダーとしての自覚が足りない。自ら考えて行動しないどころか、チームメンバーのミスを人ごとのように報告してくる。どうしたらいいのか?
あなたは、相手をリーダーだと認めて接しているだろうか? リーダーとして扱われていなければ、リーダーとして行動するはずはない。
最近私は、ある団体の広報リーダーを引き受けた。ところが、依頼されたのは「Facebookアカウントの立ち上げ」だ。途端にやる気を失った。「リーダーを任されていない」と感じたからだ。
上司と部下の関係は、「Facebookアカウントを立ち上げろ」という上から下への指示で成立する。しかし、リーダーという役割を期待するのであれば、広報という領域を任せきって、リーダーとして扱う必要がある。
任せきれないリーダーの前には、指示待ち人間たちが並ぶ。任せるリーダーの周りには、リーダーたちが集まる。どんな人たちを引き寄せるかは、リーダーしだいなのだ。
「何を達成したいのかを教えてくれたら、あとは考える。任せてほしい」。私はこう要望した。Facebookアカウントの立ち上げは、目的地に到達するための手段のはずだ。目的地が分からなければ、どうやってそこに行くかを考えることはできない。「考えなくていいから、やってくれ」と言われたようなものだ。広報リーダーを任されたとは思えなかった。
「メンバーは目的地を知っているか?」と自問してほしい。成果を出しているチームのリーダーは、「口酸っぱく」「しつこく」「聞き飽きたといわれるくらい」強調している、と口をそろえる。「伝えたつもりだが」「最近は言っていないかも」と不安げなリーダーは、指示待ち人間に悩んでいるケースが多い。
聞き手の能力に頼らずに、すり合わせの対話を繰り返す(「タイプ1 聞き手の能力に頼りすぎるリーダー」参照)。リーダーが語らなくなると、メンバーは「重要ではない」という印象を持つ。事あるごとに繰り返す。目的地を向いていない言動は、見逃さずに叱る(「タイプ2 叱れないリーダー」参照)。リーダーの大切な役割だ。
目的地に行く方法は1つではない。どの道を行くかは、任せたメンバーが自分自身で考え抜く。このプロセスが重要だ。「Facebookアカウントを立ち上げろ」と道を指定することで、このプロセスを奪ってはいけない。
組織メンバー全員が参加するワークショップが大好きな上司と、仕事をしたことがある。当日に組織の目標が発表され、その場でアクションの洗い出しと優先順位を決める。あるとき、私の担当領域が対象となった。
提示されるデータは、結論ありきで恣意的に集められているように思えた。「どうやって目的地に行くか?」と問われても、考え抜く時間が与えられていないので、通り一遍のアイデアしか出てこない。十分にアイデアが洗い出されたとは思えなかったが、決められた時間がくると、多数決で優先順位が決められた。
ゼロから一緒に考えるのでは、自分自身で考え抜くプロセスが奪われる。信頼して任されている気がしなかった。そして、あらかじめ準備された回答に「誘導された」「言わされた」という印象ばかりが残った。同じような経験をしたことがある人は、私だけではないはずだ。
「言わされた」印象は、「やらされている」感じしか生まない。「Facebookアカウントを立ち上げろ」と指示されたのとなんら変わりはない。「やらせておいて、“考えていない”はないだろう。やらせるなら、全部考えてくれ。“一緒に考えただろう”“決めた場には、きみもいた”と責任を押しつけるのか?」。リーダーどころか、完全なる指示待ち人間の誕生だ。
では、任せたメンバーが考え抜くプロセスに、リーダーはどう関わればよいのだろうか? 信頼して、任せるだけで大丈夫だろうか? リーダーの役割は、「目的地と方向がずれてきた」「この場合にどう対応するかを考えよう」と、本人が気付くような問いかけをしながら、伴走をすることだ。これを怠れば、単なる「丸投げ」となる。
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明治学院大学 経済学部准教授