同じ成果を出すのに、苦労する方法と苦労しない方法があったらどちらを選びますか。
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どんなに熱心に指導しても、期待に応えようと努力をするどころか、ますますやる気をなくしたり、反抗的な態度をとったりする部下がいて困っていると訴える人たちがいます。
「こんなに面倒みてやっているのに、感謝の気持ちすら持っていない」
「あんなに迷惑かけてばかりいるのに、反省のかけらも見えない」
などと言い募りたくなる気持ちは理解できます。ただ、そうやって、他者に厳しい目を向けてしまうのは、自分に厳しいからだともいえるでしょう。自分に厳しいと、他者に厳しい見方をしてしまいがちです。
「自分がこれだけやってきたのだから、やるのが当然だろう。これぐらいしかできないのは、怠慢としか言いようがない」というふうに考えてしまいます。なかには無意識に、「自分がこれまで苦労してきたんだから、相手も苦労しないと許せない」といった復讐(ふくしゅう)的な気持ちを抱いている人もいるでしょう。
自分に厳しい人たちは、刻苦勉励(こっくべんれい)、刻苦精励(こっくせいれい)といった言葉があるように、苦しみながら学ぶのを尊いことだと信じているかもしれません。けれども、同じ成果を出すのに、苦労する方法と苦労しない方法があるとしたら、どうでしょうか。わざわざ苦労する必要があるのでしょうか。
もしあなたに、どちらがいいかを尋ねたら、「そりゃあ、苦労しない方がいいに決まっているさ」という言葉が返ってきそうです。ところが自分に厳しい人たちは、実際には、無意識に前者を選ぶでしょう。
なぜなら、自分が我慢したり苦労したりしてきた経験があると、「苦労しない方法」があるとは思えません。仮に苦労しない方法があったとしても、「そんなうまい話があるわけがない。まゆつばだ」と信じられません。
もっと簡単に言えば、人は無意識に「自分に馴染んでいる方」を選ぶからです。
個人的な問題で相談に訪れる人たちの中には、会社の経営者も少なくありません。けれども個人的な問題であるときは、相談者の社会的な立場を知る必要がなければ、仕事の話に触れないで終わることもあります。
とはいえ、どんな立場の人であっても、個人的な話が分かれば、その人が他の場面でどんな言動をとっているか、それによって、どんな状況を引き起こしているかを推測するのは難しいことではありません。
私たちが親子関係や家庭環境で育ち、その育成過程を通して獲得した経験は、私たちの人生の原型となっています。自分の価値観や物事の捉え方、問題の処理の仕方、自動的にとってしまう言動といったものは、それに気付いたとき、自覚して変えようとしない限り、気付かずにやり過ごしてしまうでしょう。
冒頭で、自分に厳しい人は「苦労する方法」を選択すると言ったのは、厳しい生き方がいわば、自分固有の「言動パターン」となっているからです。それがまさに固有のパターンとして自分に根付いているために、ポジティブなものであれネガティブなものであれ、家庭でも職場でも、その他の人間関係や状況においても、そのパターンに即した選択や決断をします。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授